令和の野球探訪BACK NUMBER
甲子園にも、侍ジャパンにもいない。
京都で見た、プロ志望の逸材遊撃手。
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2019/09/04 19:00
流れるような守備でSNS上でも話題を集めた京都国際・上野響平。甲子園出場はならなかったが、プロを目指し、今日も笑顔でボールを捌く。
ボールを落としたり、回転したり。
上野もまた「ウチでプロに行こう」との言葉を伝え聞いて進学を決めた。前述のグラウンド環境や理念から「高校野球だけで通用するものを教えても仕方ない」との方針で、ありとあらゆることに手を出すのではなく守備に多くの時間を充てており、取材日の練習も午前中はすべて守備だった。
まず、ボール回しだけでも複数のパターンがある。あえて一度ボールを落としてから投げるもの、動きながらクルッと回ってから投げるものなど多岐にわたる。
ノックもただのシートノックだけでなく、ソフトボールの狭い塁間で行うものがあり、これは「捕ってからすぐ投げる」感覚を養わせるなどそれぞれに目的がある。
攻撃的な守備を常に求める。
印象的なのはどの選手も守備練習を楽しそうにやることだ。攻撃的にボールを追いかけ、厳しい声が飛ぶのは消極的なプレーの時だ。
上野も「守備は楽しいです」と笑い、「足をしっかり動かすことはどんな状況でもしています」と話す。捕球の感覚は「最後まで目を離さず腕の力を抜いていたら、あとは自然に」と指導されているという。そして最も大事なことは「いろんな打球が来て、片手でも両手でも捕りますが、“一番速いプレー”を心がけています」と明かし、それがダイナミックにも見えるプレーの要因ともなっているようだ。
打撃に関してもスイングを夏前に改造。左半身主導から右半身主導のフォームに変え、どの球にも対応できて、どの方向にも力を伝えられるようにした。また、冬から行ってきたウェイトトレーニングで筋力アップをさせた効果もあり、5月の京都大会終了後から9本塁打を放つなど、もともとあったミート力に加えて力強さが増してきた。