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素根輝が世界で見せた柔道の醍醐味。
162cmのハンデは「むしろ武器だと」。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byNaoki Nishimura/AFLO SPORT

posted2019/09/02 11:40

素根輝が世界で見せた柔道の醍醐味。162cmのハンデは「むしろ武器だと」。<Number Web> photograph by Naoki Nishimura/AFLO SPORT

身長が10cmほど高いオルティス相手に粘りの柔道を見せた素根輝。個人戦に初めて挑んだ世界柔道で金メダルを獲得した。

個人戦代表から外れた昨年。

 代表選手中ただひとり中学生として派遣された世界カデ選手権(15~17歳の世界選手権)優勝、高校1年生で全日本カデ選手権優勝、そしてシニアの国際大会に出場するなど早くから頭角を現した素根は高校2、3年生のときに世界選手権の団体戦代表として選ばれた。でもその2度の世界選手権の意味は大きく異なる。

「2年前のときは選んでいただいてうれしかったです。でも昨年はすごい悔しい気持ちでいっぱいでした」

 その昨年は全日本選抜体重別選手権、全日本女子選手権双方で優勝しながら、個人戦の78kg超級代表には選ばれなかった。容易には受け止め切れなかったが、「国際大会で結果を残せていない、自分の実力が足りないからだ」となんとか切り替えた。

 今年、再び全日本選抜体重別、全日本女子で優勝。ようやくつかんだ世界選手権の個人戦代表の座であった。

小柄な162cm、リーチの差。

 選ばれた舞台で証明しなければいけないのは、「世界で通用するということ」。

 素根は身長が162cmだ。オルティスより10cm前後低いことが象徴するように、この階級では誰よりも小さい。体重こそ、長年の積み重ねで増やしてきたというものの、身長差、そこから生まれるリーチの差などは大きい。

 だから国際大会では、相手に上からかぶさられるよう組まれ、先に指導を受け劣勢に立つことがあった。昨年、代表に選ばれなかった理由とされた国際大会の成績ともかかわる問題だ。

 でも、それをハンデとは捉えなかった。

「むしろ武器だと思っています。小さいことをいかした担ぎ技や足技、あるいは組み手で、小さくても努力すれば勝てるということを見せたいです」

【次ページ】 課題は「投げきる、一本とる」。

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素根輝

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