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一進はあっても、一退はない。
「投手」大谷、復活へのステップ。
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byKyodo
posted2019/08/23 11:50
エンゼルスのチーム防御率は5点台(8月21日現在)と、メジャー全体でも下位に沈む。来季、大谷の投手としての復活はチームにとって不可欠だ。
打者として毎日プレーすることがプラスに。
だからこそ、打者としてほぼ毎日プレーしていることが、投手としてのメンタル面にもプラスに作用している現実を、大谷は否定しない。
「投げることに関して、打撃の方(の関連性)がどうこうというのはないですけど、もちろん、打つ方がなかったら今、試合には出られていないので、そういう意味ではもっとモヤモヤするんじゃないかと思っています」
確かに、今でも右肘には入念にレガースを装着し、走者としても帰塁は足から、ベースに右手でタッチしないなどの制約は少なくない。だが、もし投手だけのリハビリを続けていれば、チームの状況次第では早期復帰を望む声が高まり、オーバーペースになる可能性も捨てきれない。今の大谷自身が「モヤモヤ」することなく、日々、球場へ向かい、チームの一員としてプレーすることで、プロ野球選手としての充実感を味わえているのは、「二刀流」の賜物と言っていい。
チェンジアップを試投。
17日からは初めてカーブを織り交ぜるなど、またひとつ階段を上った。その一方で、キャッチボールの段階では、肘への負担が少ないとされるチェンジアップを試投したり、速球の球筋を変えたりと、意図的な工夫も凝らしてきた。大谷自身は「あれはまあ遊びなので、特に練習がどうのこうのというより、という感じで投げています」と笑うばかりだった。だが、肘をかばうような悪いクセを付けないために、そして本格的な投球を開始した時のために、周到な準備を重ねていることも間違いない。
「一進一退はないですね。良くはなっているんじゃないかなと思いますけど、前進し続けるだけでもない。それは、誰しもじゃないかと思いますけど」
一進はあっても、一退はない。
投げることへの「欲」も、大谷の心の中で、日々、膨らみ始めているようだった。