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15勝カルテットと短期決戦の罠。
アストロズはジンクスを破れるか。
posted2019/08/17 08:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
1990年代のブレーヴス以来の最強投手陣ではないか。
サマートレードでめざましい成果を挙げ、圧倒的な先発投手陣を作り上げたアストロズに対するどよめきが、長く尾を引いている。
なるほど、ブルペン強化時代(というよりブルペン依存時代)→ホームラン量産時代(というよりホームラン大衆化時代)と推移してきたいまだからこそ、あえて先発投手陣の充実に眼を向ける。「逆張り」と呼んではちょっと大げさかもしれないが、古典的で正攻法の補強戦略といってよいだろう。
ジャスティン・ヴァーランダー(36歳)、ゲリット・コール(28歳)、ザック・グリンキー(35歳)、ウェイド・マイリー(32歳)、アーロン・サンチェス(26歳)。実力派がずらりと並んだ先発投手陣は、シーズンが終わるころには「15勝カルテット」(グリンキーの場合は両リーグ合算になるが)を形成している可能性が高い。
1993年のブレーヴスは104勝を挙げた。
分業制度が発達し、登板数や投球回数が制限されている現在、実現すれば、これは稀有な数字だ。もっとも、少し時代をさかのぼれば、エース級を4枚そろえたチームは、けっして珍しくなかった。思い出してみよう。
たとえば、104勝を挙げ、ナ・リーグ西地区優勝を果たした'93年のブレーヴス。
このときは20勝投手が2枚と、15勝投手が2枚そろっていた。20勝のグレッグ・マダックス(27歳)、22勝のトム・グラヴィン(27歳)、15勝のジョン・スモルツ(26歳)、そして18勝のスティーヴ・エイヴァリー(23歳)。
ご覧のとおり、4人とも年齢が若い。この年はNLCSでフィリーズの軍門に降ったものの、2年後の95年(野茂英雄とチッパー・ジョーンズがナ・リーグ新人王を争った年)にはインディアンスを4勝2敗で倒し、待望のワールドシリーズ制覇を果たしている。