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世界強豪が日本に集うラグビーW杯。
「因縁」がぶつかり合う注目対決は?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2019/09/11 11:50
今年2月、シックスネーションズで対戦したアイルランドとスコットランド。両者の対決は同組となる日本のグループステージ突破にも大きく関わってくる。
ラグビー史を彩る「巨人」対決。
プールBでは、「巨人」同士の対決がいきなり実現する。過去、RWC3回優勝のニュージーランド(2位)と、2回優勝の南アフリカ(4位)が9月21日に横浜で激突する。
ニュージーランドは「オールブラックス」、南アフリカは「スプリングボクス」というニックネームを持ち、両国は世界のラグビー史を彩ってきた。ラグビーのあらゆるカルチャーを総合的に判断した時に、「巨人」と呼ぶにふさわしいのはこの2カ国をおいて他にはない。
今回の予選プールの試合は、両国にとって99回目の対戦になる。これまでの対戦成績はオールブラックスの58勝36敗4引き分け。しかし、南アフリカは1970年代までは常に対戦成績をリードしており、両国のプライドはまさに五分と五分と言っていいだろう。
近年はオールブラックスの充実ぶりが目立つが、今年の7月27日に「ザ・ラグビー・チャンピオンシップ」で対戦した時には、終了直前に南アフリカが追いついて、16対16の引き分けに。
RWCでは決勝トーナメントで再戦の可能性もあるだけに、巨人同士は手の内を隠すに違いない。そうなると勝敗を分けるのは、「地力」だ。
巨人たちの真の実力を見極めて欲しい。
「死のグループ」の注目カードは?
プールCに目を移すと、イングランド(3位)、アルゼンチン(11位)、フランス(8位)が同居。この3カ国の中ではイングランドが一歩抜け出ているとは思うが、取りこぼしの許されない「死のグループ」と目されている。
なかでも注目は9月21日に東京スタジアムで行なわれるフランス対アルゼンチン戦だ。この両国にはRWCでの因縁がある。
2007年のRWCフランス大会、開幕戦でフランスはアルゼンチンに敗れた。ホスト国として、世界に恥を晒してしまったのである。この敗戦によって、準々決勝はフランスから離れ、ウェールズ(5位)で戦うことになってしまった。
ところがフランスとは不思議なラグビーチームで、準々決勝でオールブラックスを破ってしまう。
世界のラグビー界には、こんな言葉がある。
「フランスの選手たちが自主的にカフェに集まり出したら、彼らは化けるんだ」
つまり、危機的状況にならないと、本気にならないのがフランスなのだ。
近年、アルゼンチンはニュージーランド、南アフリカ、オーストラリア(6位)との対戦が増え、世界でもトップクラスの実力を誇るようになった。この対戦、ハッキリとアルゼンチンの方が優位だ。
フランスは4年後にRWCフランス大会を控えている。格上のアルゼンチン相手に、挑戦者モードになれるかどうかがポイントになりそうだ。