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「目指すは金メダル」が帯びる現実味。
女子ホッケー・さくらジャパンの現在地。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2019/08/21 11:00
大舞台で頂点を目指すホッケー女子日本代表・さくらジャパン。
速さと戦術理解を求めたファリー監督。
目標を現実にするために、チーム作りにも着手した。高い位置からプレスをかけてボールを奪いに行くハイプレスを採用。選手に走力を求める一方で、戦術理解の強化に努めた。
「ボールを得た瞬間、どういうプレーをすればよいのか、判断の速さを重視しています」
対戦相手のプレーを選手自身に分析させる試みも、その一環だった。
どうしてもフィジカルでは、体格に勝る欧米の強豪国には一歩劣る。その差を埋めて対抗していくには、プレーや判断のスピードで上回る必要がある。ハイプレスも含め、自分たちのペースで戦う時間を増やすことで優位に立とうという方針がある。
その戦術が浸透しつつあるのが、成績に現れてきている。今年7月に行われたテストマッチでは、リオ五輪金メダルのイギリス相手に2連勝し、世界ランキング1位のオランダとも僅差の戦いを演じてみせた。
ただ、選手はそれに甘んじていない。
ファイナル女子8カ国国際で主将を務めた浅井悠由(コカ・コーラ)は言った。
「課題も多いですし、まだまだこれからだと思います」
代表争いも激しい。
「大会ごとにメンバーをかえてやっています」
そうファリー監督がいうように、その都度、招集メンバーは変化する。
準優勝のファイナル女子8カ国国際は比較的若い選手主体で臨んだ。
ファリー監督はこう説明する。
「若いメンバーに国際レベルを経験させることもありますが、いろいろなメンバーのプレーを見てセレクションにつなげられる。年長の選手にプレッシャーをかけておしのけてくれるくらいやってくれると、という期待もありました」
選手個々が安閑としているわけにはいかない。
激しい競争がきっと、選手のレベルアップに、チームの底上げにつながる。
過去を振り返れば、目標までの道は楽ではない。
それでも、チームに浸透する確固とした目標と指針を信じ、それを力として選手たちは進もうとしている。
約1年後の大舞台で笑えるときを目指して、さくらジャパンは歩み続ける。