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遠藤保仁、公式戦1000試合出場。
定位置を失っても新たな輝き方。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/08/05 11:30
約20年間、日本サッカーの顔であり続けた遠藤保仁。公式戦1000試合出場はあまりにも偉大な記録だ。
松本山雅戦で「一刺し」のパス。
その象徴が6月29日の松本山雅戦だった。先発でピッチに立った遠藤は1対1で拮抗していた展開で、倉田秋の決勝点をお膳立て。まさに「一刺し」するパスで、チームを勝利に導いた。
一方で、大記録を達成したヴィッセル神戸戦は対照的な試合展開だった。2点をリードして迎えた後半19分、遠藤は、1000試合目のピッチに立った。
理想的な展開での投入に指揮官は「ボールを握りながら、また試合をしっかりと、時計の針を進めるという狙いがありましたし、そんな中で、相手陣内まで押し込んだ中で、決定的なパスを期待して起用した」(宮本監督)
昨季、今野が口にしていたこと。
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しかし、明らかな采配ミスが試合の流れを一変させてしまう。
互いに攻撃を持ち味とする矢島慎也との2ボランチも悪手だったが、前線で「ロストマシーン」と化していたアデミウソンと、バテ気味だった宇佐美貴史の2トップが守備面ではチームの足かせになってしまった。
ボールを握るどころか、ヴィッセル神戸の勢いに飲まれた展開で、遠藤は低い位置でのプレーを余儀なくされ、守備で苦しい対応を強いられていた。
昨年終盤、破竹の9連勝を見せていた当時、遠藤と絶妙なコンビを見せ、中盤を制圧した今野泰幸は、実に示唆的な言葉を口にしていた。
「ヤットさんは、周囲さえよければまだまだ輝くんですよ」
遠藤の戦術眼と依然健在な「一刺し」を生かすならば、周囲にハードワーカーを揃えることは不可欠。ヴィッセル神戸戦で得た教訓である。