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メダルは1人だけなのにチーム戦?
五輪自転車ロードレースの独特さ。 

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杉園昌之

杉園昌之Masayuki Sugizono

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photograph byTokyo 2020

posted2019/07/31 17:00

メダルは1人だけなのにチーム戦?五輪自転車ロードレースの独特さ。<Number Web> photograph by Tokyo 2020

一見個人での戦いに見えるが、チーム競技であるサイクルレース。そのルールの深みを知れば、ハマることは間違いない。

エースを勝たせるためのチーム競技。

 自転車ロードレースは1人の選手が表彰される個人競技でありながら、実質はチーム競技。基本的に1人のエースを勝たせるために、ほかの選手たちは仕事をしていると言っても過言ではない。

 エースを助ける選手たちはアシストと呼ばれ、前を走って風よけになり、チームカーから水と食料を運んだりもする。エースがパンクなどの不測の事態に見舞われれば、自らのホイールを差し出すことさえある。

 テスト大会に出場していた日本人選手たちに聞くと、母国開催の五輪であっても、根本的にはチームで戦う精神は変わらないという。

国のレベルによって出場人数が変わる。

 世界的に広く知られるツール・ド・フランスなどのレースと五輪が異なるのは、1チームの出場人数が国のレベルによって変わること。

 現在、ツール・ド・フランスは1チームごとに一律8人が出場。五輪は国際自転車競技連合(UCI)の定めた2019年10月22日付のワールドランキングに従い、エントリー数が決まる。

 実質はチーム競技でありながら、最大5人出場する国もあれば、1人で戦う国もある。単純に出場人数が増えれば増えるほど、有利にレースを運べるが、現状、開催国の日本で出場できるのは2人のみとなっている。

 2枠をかけた争いはし烈。どのサイクリストも母国開催の五輪に特別な思いを抱いている。

「自転車は五輪だけではないですが、オリンピアンは自転車選手の垣根を越えて、多くの人から応援されますからね。東京開催ですし、特別な思いはある」(初山)

 テスト大会で日本人2位となった石橋学(チームブリヂストンサイクリング)は、野心を隠そうとはしない。

「五輪は世界的に注目されるイベント。自転車競技界にとってプラスだし、自分にもメリットがある。活躍すれば、活動の幅が広がってきます」

【次ページ】 ロードレースの定石と多少の葛藤。

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