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マリノス仲川輝人が張る伏線の妙。
相手の思考を読み取り、裏をかく。
text by
中川聡(Number編集部)Sou Nakagawa
photograph byGetty Images
posted2019/07/05 11:40
小柄ながら今マリノスに不可欠な仲川輝人。2018年ルヴァン杯決勝では刈り上げた横髪をトリコロールカラーにしたことも。
仲川が多く作りたいと言った形。
チームの全得点に絡んだ仲川だが、試合後の表情からは消化不良がうかがえた。FC東京のように、しっかり守ってそこから前線へと素早く転換するスタイルのサッカーを崩すために、やりたいことができなかったもどかしさがあったのだろう。
「1回、(天野)純くんからキーパーとDFの間に早いクロスにヘディングで合わせたやつがあるんですけど、あの形を多く作りたい。引いてる相手に対して、大外から相手の見えないところに入っていって、純くんも早いクロスで、『狙ってないよ』って見せて狙ってるみたいな。
そういった相手の逆を突くようなクロスも必要ですし、相手の前で回してるだけじゃ崩れないんで、ああいったクロスが必要かなと思います。というかもっと増やしたほうがいいかなと」
「デブライネがああいうクロスで」
後半に入って57分、マルコス・ジュニオールからの落としを受けた天野が、左サイドから鋭いアーリークロスを供給。うまく相手DFのマークを外し、ヘディングで合わせたが少しタイミングがずれ、ボールはゴールの上へと外れた。
「(マンチェスター・)シティとかもデブライネがああいうクロスで、ウイングが下げたボールをダイレクトでキーパーとDFの間に送るっていうのがあるんで、そういうのがこういった相手に対しては効果的だなと思います」
マリノスの攻撃は、細かいパスをつないで相手DFの位置を少しずつずらし、そのギャップを突いてエリアに侵入して決定機を作るケースが目立っていた。その中でのアーリークロスはFC東京の選手たちも意表を突かれ、反応が遅れたように見えた。
この仲川の言葉を聞いて、2カ月前の試合でのコメントが思い起こされた。4月28日の第9節、日産スタジアムで行われた鹿島アントラーズの一戦でのことだ。
右サイドでボールを持つたび、仲川は縦に突破を仕掛け、鹿島DFの安西幸輝とのマッチアップを続けていた。69分、そこで初めてカットインを試みると安西の対応は遅れ、そのまま左足一閃。ゴールネットに突き刺した。