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ピットに持ち込まれた「改善」。
より強いチーム作りを友山副社長に聞く。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byTOYOTA
posted2019/07/09 16:30
昨年の初優勝時のトロフィーと共にル・マンのホームストレッチを走った友山副社長。
生産効率を追求する会社が、なぜレースを?
またトヨタは国内だけでなく、海外においても幅広くレースに関わってきた。昨シーズンのWRC(FIA世界ラリー選手権)でも総合優勝を収めたことは周知のとおりだ。
だが「トヨタ」という名前を聞いた時に多くの人がイメージするのは、カローラやプリウスを始めとする良質な大衆車であり、「カンバン方式」と称されるような、効率を極限にまで追求した生産方式だろう。そもそも無駄の極致ともいえるモータースポーツとは、明らかにそぐわない。
では、この謎をどう考えるのか?
トヨタ改革のキーマン、友山茂樹。
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多忙を極める中、ル・マンのサルトサーキットで疑問に答えてくれたのは、トヨタ自動車副社長にして、GAZOO Racing Companyプレジデントの友山茂樹である。
友山は1998年にはGAZOO.com(全国の中古車を検索できるシステム)、2000年にはトヨタコネクティッド (デジタル技術を駆使した、総合的なソリューション提供事業)、そして2007年にはGAZOO Racing を豊田章男社長と共に立ち上げるなど、トヨタが推し進める改革のキーマンとなってきた。
――友山さんは数々の新機軸を手がけられてきました。その発想の源、組織を刷新していこうとする革新的なアイディアは、どこから生まれているのでしょうか?
「社長も私も、もともとはトヨタ生産方式を展開している生産調査部、大野耐一(カンバン方式などの生産方式を確立した元副社長・故人)が作ったトヨタのオリジンともいえる部署で改善をやっていた人間なんです。自分たちの専門分野は何かと言われたら、TPS(トヨタ生産方式)の改善になるんですね。
そもそも日本は資源もないし、お金もあまりない。そこで競争力をつけていくには、モノの作り方とか考え方を研ぎ澄ませていかなければならない。改善を積み重ねていかにうまく作るか、いかに無駄がなく業務を回すかが日本の競争力になるという発想が、生産調査部にいる4年間にすごく身についたんです。
改善というのは、ずっと続いていくプロセスです。(物事は一旦)改善された後は、改善前の状態になる。だからこそ、常にあるべき姿を求めていくのが大切であって、必ず変革をしていかなければならないし、現状に甘んじてはいけない。
その意味ではコネクティッドやGAZOO Racing、そしてTPSもこれからのトヨタを作り、トヨタの変革を促す上で非常に重要な領域だと思います。
たしかにGAZOO Racingはクルマづくりの変革であって、コネクティッドは自動車ビジネスの変革になる。これらは全く接点がないようですけど、実はすごく関連していて。最新のレーシングカーというのは、最新のコネクティッドカーでもあるんです。この分野(WECやル・マン)などは特にそうですよね」