レーシングスピリッツとトヨタ型の経営術。

　注目すべきは日本を代表する大企業、しかも堅調な経営を続けるトヨタの内部から、極めて意欲的で新たな発想が生まれていることだろう。

　かつてエズラ・ヴォーゲルが『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を世に送り出した頃、日本型の経営モデルは世界中で脚光を浴びていた。だが日本経済全体が徐々に勢いを失うにつれて、迅速な意思決定や組織の革新を妨げる、非効率の象徴だとみなされるようになってしまった。トヨタは期せずして、このような日本型経営モデルの有効性も、世界に改めてアピールする役割を担いつつある。

　世界初の量産型ハイブリッド車両であるプリウスを起源とするレーシング・ハイブリッド・システム、ル・マンにおいて2年連続でワンツー・フィニッシュを飾った圧倒的な強さ、そしてモータースポーツの世界に新たな形で導入された、トヨタ型の経営モデル。トヨタとGAZOO Racingの動向から、ますます目が離せなくなってきた。