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ピットに持ち込まれた「改善」。
より強いチーム作りを友山副社長に聞く。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byTOYOTA
posted2019/07/09 16:30
昨年の初優勝時のトロフィーと共にル・マンのホームストレッチを走った友山副社長。
トヨタの文化にある「豊田綱領」とは?
――関連してお尋ねします。私は今朝のミーティングに参加させていただきましたが、GAZOO Racingはトヨタが培ってきた改善の伝統、ひいては日本型の組織マネージメントそのものを、新たな形で活かされていこうとしている印象を強く受けました。
「そのとおりだと思います。我々には『豊田綱領』というものがあります。これはTPSと共にトヨタの文化になっているんですが、その中に『家庭的美風を作興すべし』――家族的な組織運営をするという項目があるんですね。
そういう考え方はGAZOO Racingになってから、モータースポーツ運営の中にも活かされています。だからWRCなどでもそうですが、他から来たドライバーもGAZOO Racingに来ると、すごく心地良いと言ってくれる。そして自分から積極的にエンジニアやメカニックに声をかけたりして、いい関係を作っていこうと努力していくようになるんです」
「大きく変革するためのトップダウン」
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――そのような新たな流れが、トヨタのような日本を代表する企業で芽吹いた、しかも友山さんのような組織のトップの方が改革の先頭に立つ形で推進されているというのは、特筆すべきことだと思います。
「もともとトヨタはボトムアップ経営だったんですが、こういう激動の時代ですから、なにかを大きく変革するためにはトップダウンだと、社長が言い始めているんです。
でもトヨタのトップダウンとは、本社の部屋の中で頭のいい人たちが決めたことを現場におろしていくのではなくて、文字通り『トップの人間がダウン』=現場に降りていく。
実際、GAZOO Racingでも、副社長の僕がサルト・サーキットの現場に、社長の豊田がWRCのラリー・イタリアで、サルディニア島のチームのピットのところに行っていて。さっきも写真を送ってきてくれました。
周りからは『こんなところに副社長が来ていて大丈夫なんですか?』と言われますけど(笑)、こういうふうに経営層がどんどん出ていって、現場と一体になって活動していくのがトヨタ流のトップダウンなんです。
しかもトヨタでは(ビジネスの現場だけではなく)モータースポーツの分野でも、そういう試みをどんどんやっている。僕自身、(中嶋)一貴や(小林)可夢偉とよく話をしますしね。それがチームの雰囲気を変えていくし、彼らからしてみれば、トヨタの経営陣そのものがここに降りてきているということで、一つのモチベーションにもなっていく。こういうことを通して、強いチームを作っていくことが重要だと思うんです」