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<「2019世界柔道」直前インタビュー vol.5>
悔しさをバネに這い上がる。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2019/07/25 11:30

<「2019世界柔道」直前インタビュー vol.5>悔しさをバネに這い上がる。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

左から、女子70kg級・新井千鶴(三井住友海上火災保険)、女子78kg超級・素根輝(環太平洋大学1年)、団体女子57kg級・玉置桃(三井住友海上火災保険)、団体女子70kg級・大野陽子(コマツ)。

中村美里の付き人だった玉置桃。

「気づいたら、柔道着を着ていました」

 6歳で柔道を始めた頃を振り返り、女子57kg級の玉置桃は、楽しそうに笑う。柔道家の両親のもとに生まれ、自然な成り行きで柔道に足を踏み入れた。中学3年のとき、全国中学校大会で優勝すると、意欲が芽生えた。

「五輪や世界柔道に出たい」

 郷里である北海道を離れ、東京の強豪校へ進み、高校卒業後は三井住友海上に入社した。「レベルが高くて、投げられてばっかり」だったが、少しずつ大会で結果が出始めた。

「あ、強くなっているんだと実感しました」

 そんな日々を過ごす中、思いを一新するときが訪れた。2016年の夏、玉置は、五輪が行なわれていたリオデジャネイロにいた。同大会女子52kg級代表・中村美里の付き人としてであった。まのあたりにした大舞台に刺激を受けた。

「言葉にすると難しいですが、ひとことで言うと素晴らしいところでした。そこで感じたのは、人が見ていないところでも努力していないと、この畳の上に立てないし金メダルも獲れないんだ、ということでした。リオのあと、今までの努力じゃ足りない、と、もっと練習に取り組むようになりました」

積極的で緻密な柔道をしたい。

 その成果として、昨年は世界柔道の団体戦代表に選ばれた。

 試合に臨んでみると、「いい経験になったし次に生かせる」と思わせてくれた。しかし、それ以上に心に残っているのは、個人戦をスタンドで観ているときだった。

「上から見ているだけで何もできない自分が情けなくて、悔しくなりました」

 日本代表として畳に立っていたのは、芳田司。その姿に、「立ち止まっちゃだめなんだ、自分は追いかける立場なので、最後の最後まで追いかけて、最後は抜かせたら」と思った。

 その後、芳田とは2度対戦し、グランドスラム大阪で勝利し、全日本選抜体重別選手権で敗戦。2019世界柔道の個人戦代表にはなれなかったが、団体戦代表に選出された。

「しっかり準備して臨みたいです。一本を獲る派手な技はないので、積極的で緻密な自分の柔道を出したい。玉置桃もいるんだなと思わせたい」

 心に刻む言葉がある。

「『上を見て努力、下を見て感謝』。上にはもっと強い人がいて、もっと努力しないといけないし、でも下には支えてくれる人たちがいるので感謝しないといけないと思っています。

 団体戦に選んでもらったことさえ感謝しているし、チャンスをくれたと思っています。そんな思いで戦いたいです」

【次ページ】 中学から柔道一直線だった大野陽子。

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