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<「2019世界柔道」直前インタビュー vol.5>
悔しさをバネに這い上がる。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2019/07/25 11:30

<「2019世界柔道」直前インタビュー vol.5>悔しさをバネに這い上がる。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

左から、女子70kg級・新井千鶴(三井住友海上火災保険)、女子78kg超級・素根輝(環太平洋大学1年)、団体女子57kg級・玉置桃(三井住友海上火災保険)、団体女子70kg級・大野陽子(コマツ)。

期待されたホープ素根輝がついに。

 早くから期待されてきたホープが、念願の2019世界柔道個人戦の代表をつかんだ。

 女子78kg超級、素根輝である。経歴は華やかだ。

 代表選手の中でただ一人の中学生として出場した世界カデ選手権優勝。高校1年生でシニアの国際大会に派遣されるようになり、2年生になると全日本選抜体重別選手権を高校生としては21年ぶりに制覇。3年生となった昨年は全日本選抜体重別連覇に加え、全日本女子選手権で初出場初優勝を遂げた。

 ただ、世界柔道には2017、2018年の団体戦代表には選ばれたものの、個人戦には手が届かなかった。

「2年前の団体戦のときは選んでいただいてうれしかったです。でも昨年は、(全日本選抜体重別、全日本女子の)2つに勝っても選んでもらえなくて、すごい悔しい気持ちでいっぱいでした」

 それでも、「国際大会で結果を残せていないからだ。自分の実力が足りないんだ」と気持ちを切り替えた。

「ゴールデンスコア(延長戦)になったら絶対負けない自信があります」と自身の持ち味を語るように、豊富な練習量で台頭してきた素根は、一層練習へと気持ちを向けた。

 大学1年生となった今年、再び、全日本選抜体重別、全日本女子で優勝。1年前の悔しさをバネにつかむことができた2019世界柔道個人戦の代表だった。

全部倒すつもりでやっていきたい。

 今、2019世界柔道への抱負を力強く語る。

「優勝だけを目指して、1回戦から自分の前に出る柔道で勝ち上がっていきたいです」

 優勝という目標に加え、別の思いもある。

「小さくても勝てるというところを見せたい」

 女子78kg超級では、162cmの素根はひときわ小柄だ。リーチでも体重でも上回る相手との戦いを強いられる。

「でも、そのことを苦にはしていなくて、むしろ武器だと思っています。小さいことをいかした担ぎ技だったり、足技、あるいは組み手で、小さくても努力すれば勝てるということを見せたいです。(得意とする)背負い投げも、しっかり決められるようにしたいです」

 同じ階級には、朝比奈沙羅も出場する。昨年の世界柔道覇者である。

「これからも何回もあたると思いますが、全部倒すつもりでやっていきたいですね」

 世界一になるための決意は固い。

【次ページ】 中村美里の付き人だった玉置桃。

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