スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
大谷翔平とサイクルの狼煙。
後半戦、さらなる打棒爆発に期待大。
posted2019/06/22 16:30
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
AFLO
大谷翔平のバットにエンジンがかかってきた。最近のハイライトは、なんといっても6月13日に達成したサイクルヒットだ。
サイクルヒットという呼び名は和製英語だ。英語ではhit for the cycle、略してサイクルと呼ぶことも多い。大谷は史上326番目で、翌14日には、インディアンスのジェイク・バウアーズがこれにつづいた。
これで延べ327回。ノーヒッターの達成が延べ300回だから、希少価値はほぼ同じと見てよいのではないか。
大谷は、第1打席で左中間に本塁打を放った。第2打席では左中間を抜く二塁打。第3打席が右翼線に転がる三塁打。そして第4打席が、右中間にポトリと落ちるシングル。
いわゆる「ナチュラル・サイクル」(単打→二塁打→三塁打→本塁打の順で達成されるサイクル)ではなかったが、これを達成した選手は史上14人しかいない。偶然の要素が強すぎるためで、最近では、2006年のゲイリー・マシューズJr.(レンジャーズ)の名が挙がる。
サイクル複数回達成者は少ない。
ノーラン・ライアンは、ノーヒッターを7度も達成した。サンディ・コーファックスは4度。では、サイクルヒットの複数回達成者はというと、意外に少ない。
3度達成した選手が4人しかいない。19世紀のジョン・ライリー(レッズ)、1920年代のボブ・ミューゼル(ヤンキース)、'30年代のベーブ・ハーマン(ロビンズとカブス)、そして21世紀のエイドリアン・ベルトレ(マリナーズとレンジャーズ)の4人だ。
このなかで馴染み深いのは、昨年引退したベルトレだろう。現役21年間で3166安打、477本塁打。失礼な言い草だが、ドジャースでデビューしたころは、ここまで伸びる選手とは思えなかった。