スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
大谷翔平とサイクルの狼煙。
後半戦、さらなる打棒爆発に期待大。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byAFLO
posted2019/06/22 16:30
MLB日本人初のサイクルヒットを達成し、チームメイトの祝福を受ける大谷翔平。
打棒はさらに爆発するだろう。
ラーンチ・アングル(打球の射出角度)が低い('18年の平均が12.3度だったのに、'19年の平均は2.5度)とか、ゴロが多すぎる(約55パーセント)とか、三振が多すぎる(156打席で41三振)とか、不満な点を指摘する声は少なくないが、逆方向(レフトや左中間)にあれだけ強く長い打球を飛ばせるパワーは並大抵のものではない。
芯でとらえた打球はこれからもっと増えていくだろうし、打球を押し出す左腕の力が強くなっていることもたぶんまちがいない。右の拳を壊したボクサーの左拳が、故障前よりも強くなっているケースは、けっして珍しくないのだ。
6月に入ってからの大谷は、.328/.385/.724、6本塁打、17打点と絶好調を維持してきた。打球速度はしばしば時速180キロに達するし、バレル・レート(芯で打球をとらえる率)も6月だけに限れば19.5パーセントに達する('18年が16パーセントだった)。
こうなると、オールスター選出の可能性も、と考えたくなる。ただ、いま入った速報によると、大谷は最終選考にあと一歩届かなかったようだ(DH部門で4位。3位のネルソン・クルーズとは約20万票差)。かえすがえすも残念な結果だが、シーズンはまだ長い。
夏が来て身体が温まり、試合勘が研ぎ澄まされてくれば、大谷の打棒はさらに爆発するだろう。
チームへの好影響も必至だ。ジャスティン・アプトンが戻り、アンドレルトン・シモンズの復帰も間近となったいま、もし投手陣さえ補強できるならば、エンジェルスがプレーオフを狙える可能性も、あながち皆無とはいえなくなってきた。