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ペブルビーチに響いた「USA!」
ウッドランドの全米OP制覇の意味。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2019/06/17 17:30
大歓声にこたえたゲーリー・ウッドランド。彼の人生には、アメリカという国の地力と理想が詰まっているのかもしれない。
ウッズから得た、飲まれない精神力。
さらにもう1つ。ウッズと回った昨夏の全米プロ最終日、ウッドランドは出だしの数ホールで「タイガーや周囲の雰囲気や勢いに飲まれていた。ようやく自分を取り戻したのは8番ごろからだった」。
あのときの苦い経験があるからこそ、今大会の最終日は「もう飲まれることは絶対にない」とウッドランドは確信していた。
そして「ペブルビーチは出だしの7ホールがスコアを伸ばすチャンス」と言っていたウッズが、そうできずに21位で終わった姿を傍目に、ウッドランドは出だし7ホールを完璧な攻めで「伸ばすこと」より、完璧ではなくても「落とさないこと」を心掛け、この4日間、この7ホールでただの1度もボギーを叩かなかった。
そう考えると、ウッドランドがウッズから授かったものは果てしない。そう、ウッドランドのゴルフの礎には、間違いなくウッズの存在があったのだ。
彼の勝利はアメリカン・ドリームだった。
ローズから授かったもの、ウッズから授かったもの、彼らとの出会いがウッドランドの運命を好転させた。
だが、勝負に挑みたい、挑もうとするアスリート魂そのものは「幼少時代から僕の中にあった」と、ウッドランドは振り返る。
「完璧じゃなくていい」という考え方も、昨夏の全米プロでウッズを眺めながら気が付いたそうだが、よくよく考えれば、それは「思い出した」が正しい表現。
「完璧じゃなくていい」という姿勢は、バスケットボールに打ち込んでいた高校時代、すでに彼の中に存在していたとウッドランドは言う。
「バスケットボールには、いろいろな道がある。シュートがダメなら、パスもあるし、ディフェンスもある。僕は、それをゴルフに応用しただけなんだ」
どこにでもいる典型的なアメリカのフツーのスポーツ少年が、バスケットボールをゴルフボールに持ち替え、山谷を乗り越え、天からの授かりものを精一杯に活用し、とうとうメジャー・チャンピオンになった。
これをアメリカン・ドリームの実現と呼ばずして何と呼ぶ?
ペブルビーチの大観衆が「USA! USA!」を叫び、「ゲーリー! ゲーリー!」を連呼していたのは、きっと誰もが「ドリーム・カム・トゥルー」に酔いしれ、夢見心地だったからに違いない。