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ペブルビーチに響いた「USA!」
ウッドランドの全米OP制覇の意味。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2019/06/17 17:30
大歓声にこたえたゲーリー・ウッドランド。彼の人生には、アメリカという国の地力と理想が詰まっているのかもしれない。
「キミは自分のゴルフをすればいい」
そのおかげで無事にQスクールを突破したウッドランドは、ローズと同じレイク・ノナに居を構え、彼と同じエージェントとマネジメント契約を結び、彼と一緒に米ツアーを転戦するようになった。
ローズから授かったアドバイスは、今でもウッドランドの胸の中にあるという。
「周りにはいい選手がたくさんいる。でも、キミは自分のゴルフをすればいい」
今週、ペブルビーチを戦うときも、ウッドランドはローズから授かったこのフレーズを「終始、反芻していた」という。
恩人であり、親友になったローズと全米オープンの決勝2日間をともに回り、勝利を競い合った巡り合わせは、運命の不可思議としか言いようがない。
11年前、Qスクールを控えていたあのとき、もしもローズに出会っていなかったら、ウッドランドの「今」はまったく違っていたのかもしれない。
そう、ウッドランドにとってローズとの出会いは、神様からの授かりものだったのだ。
「娘を失ってからの数カ月は……」
2009年から米ツアー参戦を開始したウッドランドは2011年に初優勝、2013年に2勝目を挙げたが、以後は勝利から遠ざかった。
2017年には愛妻が男女の双子を身ごもったが、この世に生まれてきたのは男の子だけだった。翌年2月、フェニックス・オープンを制し、通算3勝目を挙げたウッドランドは優勝会見で「勝てなかったこの5年間より、娘を失ってからの数カ月は、もっと辛かった」と語り、長男を腕に抱いたまま、壇上で泣いた。
思えば、あのときから彼は強くなった。
そしてウッドランドが次なる授かりものを得たのは、それから半年後の全米プロのときだった。2日目を終えて単独首位に立ったウッドランドは、重圧と緊張を感じながら最終日をタイガー・ウッズと同組で回り、ウッズの戦いぶりを間近に眺めながら、こう思ったそうだ。
「ショットは完璧じゃなくていい、それでも勝てるんだと気付いた。それが大きな自信になった」
その自信は今年の全米プロ8位タイにつながり、そして今週につながった。最終日のウッドランドのショットはラウンド半ばでやや乱れ始め、9番、12番でボギーを喫したが、「完璧じゃなくていい」と思うことで気持ちは落ち着き、「14番で再び集中力を取り戻せた」。