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“ドーハの悲劇”で1点に泣いたGK。
松永成立「ミスしたら叩かれるべき」
text by
岩崎龍一Ryuichi Iwasaki
photograph byRyuichi Iwasaki
posted2019/06/19 17:30
かつで日本代表の守護神として活躍した松永成立。2007年から横浜F・マリノスのGKコーチを務めている。
決して選手に押し付けない。
指導法には、確固たる哲学がある。自らの考え方を、決して選手に押し付けないということだ。
プロにまで上り詰めてくる選手は、成長の過程で必ず優れた指導者に巡り会っている。いろいろな指導法を吸収して現在の選手が存在している。「だから、これまで関わった指導者たちを絶対にリスペクトしなければならない」と常日頃から選手に言っている。
最終的な決定権は選手側にある。型にはめるのではなく、幾つかの選択肢を示して、選手と共に最良のものを見つけ出す。その作業を延々と続ける。
あえて「技術的」ではなく「戦術的」という表現となるプレー要素の数々。その中で最も重要となるのはポジショニングと、体の向きも含めた構えだ。これを例にとってもチェックする要素は多岐にわたる。
ボールがある角度にもよるが、ポジショニングはニアを空けず、頭を越されないことを注意する。構えに関してもボールとの距離によって、前重心の場合もあれば後ろ重心もある。高低差や手の位置、膝の角度、歩幅と、事細かにチェックする。
そして実際にシュートを受けるという試みの中から、選手がフィットする感覚を探し出す。デリケートな微調整が妥協なく行われている。
フィールドプレイヤーとは違うミスの重さ。
サッカーは極端な言い方をすれば、いかにミスを減らすかを競っているといってもいい。ミスの少ない方が、勝利に近づく可能性が高い。
ただ、ポジションによってミスの持つ重さの価値は異なる。ストライカーが1対1のシュートを外しても、いずれ忘れ去られる。対照的にミスによる失点、それが敗戦につながれば、GKのプレーはマイナスのイメージとして深く人々の脳裏に焼き付く。だからGKのトレーニングは、同じミスが「次の試合で絶対に起こらないように」を、より強く意識して行われている。
「不安要素を徹底的に取り除く。緻密さの積み重ねでしかそれはできない。そこで大事になるのが指導者の考え方、知識、指導力。そういうところになると思います」