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F1を変えたCVCがラグビー界に参画。
赤字続きのイングランドリーグは変わる?
text by
竹鼻智Satoshi Takehana
photograph byGetty Images
posted2019/05/27 10:00
2015年からラグビーイングランド代表の指揮するエディー・ジョーンズ。自国のプロリーグは大きな転換期を迎えている。
F1で莫大な利益を得た投資ファンド。
こうした状況のなか、昨年12月、ルクセンブルクに本拠地を置くCVCキャピタル・パートナーズという投資ファンドが、プレミアシップ・ラグビー・リミテッドの27%の株式を2億ポンド(約280億4200万円)で購入。株主である12の所属クラブは、それぞれ1350万ポンド(約18億9200万円)を受け取り、残りの2450万ポンド(約34億3500万円)は、プレミアシップのプロモーションビジネスに特化した新会社の設立などに使われた。
2006年から'17年にかけ、自動車レースの最高峰F1の株主でもあったCVCは、TV放映権収入のモデルを根本的に変えた実績を持つ。プロスポーツにおける大きな収入源であるこの部門の強化に、12の所属クラブは大きな期待を寄せる。
だが、いいことばかりではない。
例えばF1は、CVC参画当時多くの国で無料の地上波で放映されていたレースの放映権を、スカイなどの有料放送局へ売却。短期的には収入増となるが、これによりTV視聴者数が減り、自然とスポンサー企業への広告の魅力も落ち、参加チームのスポンサー収入減へと繋がった。
さらには、アブダビやシンガポールなど、政府資金を注ぎ込んでグランプリ開催を希望する国に目をつけ、開催権料を天文学的数値にまで引き上げ、欧州で古くからグランプリを開催するサーキットを破産寸前にまで追い込んでいる。こうして、F1というスポーツが構造的に不健全な状況に置かれるなか、CVCは2017年にその株式を売却し、莫大な利益を挙げている。
大きな転換期が訪れたプロリーグ。
CVCがF1で起こした一連の騒ぎは、当然、12のクラブのオーナーたちにもよく知られている。そもそも、赤字覚悟でプロラグビークラブを所有するオーナーの多くは、ラグビー以外のビジネスで巨万の富を築き上げたビジネスマンたちであり、CVCが何を意図してプロラグビーにその触手を伸ばしているのか、十分に理解している。それどころか、純粋な利潤目的でリーグの運営に関わる外部からの参入を歓迎しているという見方もある。
少なくとも、裕福な個人が損失を負担することで運営されるという経済的に不健全な状態にあるリーグに、転換期が訪れることは間違いない。