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世界一のラグビー大国の組織作り。
スポーツ統括団体に必要な能力は?

posted2019/05/26 10:00

 
世界一のラグビー大国の組織作り。スポーツ統括団体に必要な能力は?<Number Web> photograph by Getty Images

イングランドと日本の両国のラグビーを知るエディー・ジョーンズ。

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竹鼻智

竹鼻智Satoshi Takehana

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Getty Images

 日本ラグビーの「2019年以降」が、なかなか見えづらい。

 今年3月、日本代表強化の一環として発足したサンウルブズが2020年シーズンを最後にスーパーラグビー(国際リーグ戦)から除外されることが発表された。4月には2022年シーズンから3部制とする国内トップリーグ再編案が発表されたが、流動的な要素があまりに多い。代表活動でも、日本が参加意思を示していた新設の国際大会「ネーションズ選手権」にも、2022年の第1回大会から参加できるかどうか雲行きが怪しくなってきた。

 W杯開幕までいよいよ120日を切り、人々の興味は本大会における日本代表のパフォーマンスによりフォーカスされていくことだろう。その一方で、W杯以降の日本ラグビーについても、さらなる議論があっていいように思う。

 未来の日本ラグビーはどうあるべきか――。論点、改善点は数多挙げられるが、「世界のラグビーのいま」について見聞を広めるのも一理あるだろう。

 ここで、ロンドン在住のラグビージャーナリスト竹鼻智氏による「フットボールの母国にして世界一のラグビー大国イングランドの現状」を連載でレポートする。

 2017年にワールドラグビー(国際統括団体)が行った調査によると、ラグビー協会への選手登録を行っていない、いわゆる「草ラガー」も含めた競技人口が200万人を超えるという、世界一のラグビー大国・イングランド。

 メジャースポーツとしての確固たる地位が確立されており、母国としての歴史や伝統だけではなく、今日のプロスポーツとしての運営にも、多くの経験とノウハウを持つ。

 非登録選手含めた競技人口が27万人にも満たない日本で、社会構造や文化も大きく異なるイングランドのラグビー運営手法をそのまま真似ることはできないが、何かしら学ぶことはあるのではないか。北半球で唯一のワールドカップ優勝経験を持つ、「ティア1」の国のプロラグビーを、ビジネス目線で見てみる。

日本の6.4倍の予算の使い道。

 2018年度のイングランドラグビー協会(RFU)の経常費用は、2億300万ポンド(約294億円)と、世界各国のラグビー協会の中で最大の規模を誇る。この数字は、同年度の公益財団法人日本ラグビーフットボール協会の経常費用、約46億円の6.4倍の金額だ。

 ではRFUは、この世界最大規模の予算をどのように使い、世界一のラグビー大国を維持しているのだろうか。

 まず7100万ポンド(約99億6000万円)と、経常費用の中で一番大きな割合を占めるのが、「プロラグビーの強化費」だ。代表選手を輩出したクラブチームへの報奨金、監督・コーチ陣を含めた代表チームスタッフの人件費や合宿・遠征費、そして1試合2万5000ポンド(約350万円)にも上る、代表選手へのテストマッチ出場給も含まれる。

 この他の支出で大きいものは、「ラグビーの発展への費用」で、3700万ポンド(約51億9000万円)が計上されている。この中には、主に人件費として使われるアマチュアクラブを統括する各地域のラグビー協会への分配金や、RFUが主催する学校やアマチュアクラブを対象とした様々なプロジェクトへの費用などが含まれる。

 残りの費用は、RFUという組織の経営管理費用や、収益を挙げる為の営業費、その他雑費として計上されている。

【次ページ】 '18年は過去3年で最大の赤字。

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