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鳥取から世界へ! 人口5万の倉吉が、
クライマーたちの大切な街になった理由。 

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津金壱郎

津金壱郎Ichiro Tsugane

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photograph byIchiro Tsugane

posted2019/05/31 16:00

鳥取から世界へ! 人口5万の倉吉が、クライマーたちの大切な街になった理由。<Number Web> photograph by Ichiro Tsugane

「ボルダリング・ユース日本選手権倉吉大会」の会場となった、倉吉スポーツクライミングセンター。

かつては「谷間の世代」と呼ばれたが。

 昨年はジュニア・オリンピックのファイナリストになり、今年はボルダリング・ジャパンカップで準決勝を1位通過した実力と、競技が楽しくて仕方ない“真緒スマイル”で、注目度が高まっている中村が倉吉の名所をまわる日は、まだ先のことになるだろう。ユース最終年の彼女にとって、初めて出場した2015年と同じ開催地で行われる今年の世界ユース選手権には、やり遂げておかなければならないことがあるからだ。

「日本で勝てても、世界では勝てなかったことで、私たちの世代は『谷間』と言われてきて。でも、この年代には、阿島ちゃん(白石/アメリカ)がいて、スロベニアにはヴィタ(ルーカン)、ウルスカ(レプイシク)、ミア(クランプル)、ルッチカ(ラコベック)がいて、オーストリアにはサンドラ(レトナー)でしょ。ほかのどの年代よりも世界的に強い選手が揃っているんですよ。だけど、負けっぱなしで終わるのは嫌なので、しっかりやり返してからユースを卒業しようと思っています」

 もちろん、ドラマがあるのは中村だけに限らない。ユース最終年の土肥圭太(どひ・けいた)も、「世界選手権に出場するのが一番の目標ですが、それが叶わなかった時のために、世界ユースの出場権を確保しておきたい」と、優勝を狙って倉吉に乗り込んだ。

 しかし、昨年はジュニア・オリンピックで金メダリストになり、今年は日本代表としてW杯ボルダリングを戦う土肥の思惑は、小学生の頃から切磋琢磨してきた仲間によって打ち砕かれた。

 決勝では全課題を一撃して優勝した小西桂(こにし・かつら)と、予選を1位で通過した天笠颯太(あまがさ・そうた)は、コンペで知り合った小学3年生の頃からの土肥のクライミング仲間。今季のW杯ボルダリング中国・呉江大会で6名だけが進めるファイナリストになっている土肥の背中を追って、小西も天笠もしっかりと腕を磨き、その成果を発揮したということだ。

 果たして、土肥はこの翌週に行われたコンバインド・ジャパンカップで世界選手権への出場権を獲得。ユース日本代表の座を逃した選手が、世界選手権の日本代表になる逆転現象が起きるのも、安井コーチが目指した「ユース年代の強化」が、しっかり進んでいる証でもある。

 今大会は関西圏の選手たちの躍進が目立ったが、これも新たな流れを生む可能性を秘めている。ただ、ユース年代の選手たちは半年、1年の間で実力が大きく様変わりする。彼らが次に目指すのは、『第22回JOCジュニアオリンピックカップ・リード大会』(9月14日~16日)。さらには来年3月の『リード・ユース日本選手権』、『ボルダリング・ユース日本選手権』へと続く。

 こうしたサイクルのなかで多くのユース選手たちは順位を刺激材料にし、日々のトレーニングで実力を伸ばしていく。彼らを支える親やコーチなども、眼の前の結果に一喜一憂することなく、その成長をしっかりと見守っている。こうした環境で育った選手たちが、倉吉を経て、世界に羽ばたいていく。

 日本スポーツクライミングの新たなドラマは、すでに始まっている――。

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