話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
ガンバの希望をつないだ3人の若者。
高江・高尾・福田が得た自信と勝利。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/05/21 11:30
宮本体制のガンバがこのまま沈んでいるわけにはいかない。高江らが奮闘した大阪ダービーの勝利は1勝以上の価値を持つはずだ。
高尾も決勝点につながる縦パス。
高尾は序盤こそ緊張からか、相手に裏を2、3回取られるシーンがあったが、その後は三浦弦太のフォローを受けて安定したプレーを見せていた。
「自分を含めて若い選手が出ていたので、気持ちを強く持ってアグレッシブにプレーしようと思っていました。前から積極的にいく守備をしたぶん、横へのスライドが遅れてしまうとズレてしまう。サイドバックの時のように上がり過ぎず、弦太君との距離感を考えながらプレーしていました」
長い手足を活かしてボールを絡め取り、攻撃では倉田のゴールにつながる縦パスを入れ、ビルドアップでも非凡なものを見せた。
「使っていただけるならどこでもいい」と謙虚な高尾は「センターバックが本職(サイドバック)にも今後の自分にも活きると思う」と試合に出ること、成長することに対して貪欲だ。
試合後は好プレーをしたのにチームメイトにイジられたというが、今野泰幸とはまた別の“イジられキャラ”が新しく出てきたことはチームのムードをより明るくするだろう。
宮本監督が練習で口にした助言。
決勝点になった倉田のゴールは、高尾が高江に縦パスをつけ、高江のラストパスを倉田が決めたものだ。高尾は「前半から狙っていた」といい、高江は「瑠くんがあそこを狙っているのは分かっていたし、うまく受けることができたのが大きかった」という。
この縦パスは、練習中から高尾が見せているものだが、その時は高江がコントロールをミスしたという。宮本監督からは「あそこでスピードを出し切るよりコントロールする時の余裕を持て」と言われた。「それを(今回)しっかりと出せた」と、高江は語ったが、若手同士の意思疎通と練習での成果があのゴールにつながったのだ。
大阪ダービーに勝ち、ガンバはひとまずトンネルから抜けた。
だが、すべてが好転したわけではない。こういう気持ちの入った試合をまた同じエネルギーで戦うのは容易ではないし、対戦相手も違う。若い彼らは年間を通して試合に出てプレーした経験がない。これから疲労も出てくるだろうし、研究もされるだろう。それでもこの日、試合の中で結果を出し、どうプレーすれば勝てるのかを理解できたことは非常に大きい。