猛牛のささやきBACK NUMBER
“最後のPL”で騒がれ、そして学んだ。
オリ新人・中川圭太にある太い芯。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2019/05/17 10:30
楽天戦でプロ初本塁打を放ち、ベンチで笑顔を見せる中川圭太。ルーキーながら、現在はスタメンに定着している。
紅白戦で対峙した左腕・山田にあった“間”。
その必要性を最初に感じたのは、キャンプの紅白戦で、左腕の山田修義と対戦した時だった。山田は投球動作の中に、ほんの一瞬だが間(ま)があく瞬間がある。打席で足を上げていると、その間に我慢できなかった。
「その間で、振りにいかされてしまったんで、これじゃダメだな、と。だから、ちょっとワンテンポ間を置くピッチャーに対しては、すり足でいったほうがいいかなと。打撃はほとんどがタイミングで決まると思う。タイミングを合わせないと始まらないので、やはり足の上げ方を変えていく必要があるなと思いました」
誰にアドバイスされたわけでなく、自身でそう判断して取り組み始めた。まずベンチやネクストバッターズサークルで、投手のモーションに合わせて足を上げてみて、タイミングをはかる。
「それでタイミングを取れると思ったらそのままいくんですけど、実際に打席に入ると、『あ、違うな』と感じたことも何度もあるので、そういう時は打席の中で変えますね」
昨年セーブ王・森から同点打。
その成果は4月24日の初先発の日から発揮された。ソフトバンクの先発・武田翔太に対し、第1打席は足を上げてタイミングを取り、右前へプロ初安打を放つ。
そして、1-2とリードされて迎えた9回は、ソフトバンクの守護神・森唯斗と対戦した。1死三塁の場面で打席に立つと、ファールで粘った末に、10球目の外のカットボールを捉えて右翼線を破る三塁打とし、試合を振り出しに戻した。
「森さんの時は、足を上げたり、すり足にしたりいろいろやりました。すり足のほうが、外のカットボールに対して見えやすいと感じたので、7球目か8球目ぐらいからすり足に切り替えました」
昨年のセーブ王に対し、初打席で結果を出してしまうとは恐れ入る。
大学時代は二塁手だったが、現在は三塁手や外野手として出場。さまざまなポジションに対応することも、「苦にならない」と言う。
「試合に出るための手段として、いろいろなポジションを守れたら得ですし、出る機会が増えると思うので、前向きにやっています」とひょうひょうと語る。少々のことでは動じず、どんなことにも対応できる懐の深さを感じさせる。