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「費やした時間が1番多かった」
平石監督が期待するオコエの器。
posted2019/05/18 10:00
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Kyodo News
ある時、打撃フォームについて、もう少し細かい技術を尋ねようとすると、楽天のオコエ瑠偉は笑顔ながら自らの意思を示した。
「何も言えない。言えないですよ」
思えば、キャンプでもそうだった。
プロ入りから段階的な歩みこそ丁寧に解説してくれたものだが、詳細については「まだちょっと、言えないんですけど」と、申し訳なさそうに伏せていた。
囲み取材でもそうだ。報道陣から具体的なアプローチを矢継ぎ早に聞かれても、「言えない」と煙に巻く。それは、オコエがその取り組みに自問自答している最中であり、まだ頭で整理できていないものを安易に口にすることに抵抗感を抱いているからでもある。
「自分がやっていることにしても、それでよくなるかどうかわからないんで。今まで周りからいろんな言われ方をしてきたけど、自分はベストを尽くす。毎年その気持ちでやっているけど、今年もそうっす」
平石監督も認めるオコエの成長。
オコエは楽天の選手のなかでは、舌が滑らかなタイプだ。
基本的に聞かれたことは答える。自分の技術論や取り組みにしっかりと目を向けてくれる人間には、できるだけ誠意を持って対応するような気遣いも持ち合わせている。
それが、今年は「自分の取り組みはグラウンドで見てくれ」とばかりに、その饒舌さが鳴りを潜めている。
それは、オコエの進歩――。4年目の振る舞いについてそんな評価をしているのは、平石洋介監督だ。
「本当に成長していると思いますね。コメントひとつとっても自分がやるべきことがわかっていますし、練習やプレーを見ていても感じますしね。一つひとつの言動が変わってきたな、と思います」