炎の一筆入魂BACK NUMBER
カープ會澤翼の“漢気”と理想像。
打てて守れる、勝てる捕手として。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2019/04/27 11:30
19日のベイスターズ戦でサヨナラ安打を放った會澤。カープの復調を攻守ともに支えている。
2ケタ死球は打てる捕手の代償。
2012年DeNA戦では山口俊(現・巨人)の148kmを顔面に受け、球場から救急車で病院に搬送された。出場を増やした2014年も、シーズン終盤の8月31日中日戦で肉離れ。ケガなくフルシーズン戦えない年が続き、変わるきっかけを求めて護摩行を始めた。
「打てる捕手」として出場機会を増やし、次第に自らの地位を確立していった。2016年には25年ぶり優勝に貢献。昨年は規定未到達ながら打率3割をクリア。2年連続でベストナインを受賞した。
昨年、球団捕手として初めて記録したシーズン2ケタ死球も「打てる捕手」としての代償だろう。セ・リーグでは9番に投手が入ることが多く、主にその前を打つ捕手とは危険な勝負は避けるため自然と外角中心の配球となる。過去にシーズン2ケタ死球を記録した捕手は古田や城島、阿部など。強打の捕手の名が並ぶ。
今年もすでに2死球を受けている。それでも會澤は逃げない。
「やるかやられるか。投手との戦いなので、逃げるわけにはいかない」
昨年5月1日の巨人戦では、DeNA時代に顔面死球を受けた山口から2打席連続死球に思わず怒りを露わにし、マウンドに歩み寄ったこともあった。
「守れる捕手」としての成長も。
選手会長として、戦う姿勢でもチームを鼓舞する。先輩の黒田博樹氏は「男気」と言われていたが、會澤は「“漢”気」と表現した方がしっくりくる。
今年も打力で存在感を発揮している。開幕から固まらない打線の中で8番から7番、6番と打順を上げる。4月下旬からの連勝中に、2試合続けて決勝打を放つなど勝負強さを発揮してチームを勢いづけた。
「打てる捕手」としてだけでなく、今年は「守れる捕手」の色も濃い。マツダスタジアムでの24日、25日の中日戦では2試合続けて無失点試合を演出した。試合後には、野村祐輔と大瀬良大地、それぞれの先発投手とともにお立ち台に上がった。「なかなかないことなので良かったです。バッテリー間でいい試合をつくれているのかな」と優しい笑顔を見せた。
緒方孝市監督も「リード面も良くなった。本当に良くやってくれている」と成長に目を細める。