炎の一筆入魂BACK NUMBER
カープ會澤翼の“漢気”と理想像。
打てて守れる、勝てる捕手として。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2019/04/27 11:30
19日のベイスターズ戦でサヨナラ安打を放った會澤。カープの復調を攻守ともに支えている。
捕手としては一歩引いた役割。
打席では死球を当てられても踏み込んでいく強気な姿勢が身上も、捕手としては一歩引いた女房役に徹する。
「目立つのは投手であるべきだし、投手が目立てばいい。個人的には捕手が目立ってはいけないと思っています」
自分を前面に押し出すことはしない。あくまでも投手の良い面を引き出すことに重きを置く。だから、投手のすべてを知ることが大事。グラウンドやブルペンだけでなく、普段からさりげなく近づき、声をかける。あいさつをかわすときには、表情や声の大きさなども見る。
「何を考えているのか分かるし、意外とそういう性格をしているんだと気づくこともある」
女房役の献身性は投手にも伝わる。大瀬良は會澤とバッテリーを組むことが増えた一昨年ころから「僕もアツ(會澤)さんに近づこうとしています」と話していた。昨年最優秀バッテリー賞を受賞した2人の関係は一朝一夕では深まらない。日々の積み重ね。4月25日中日戦ではルーキーイヤーの2014年以来の完封勝利をマークした。
理想とするのは「勝てる捕手」。
會澤が理想とする捕手は、打つだけでも、守れるだけでもない。「勝てる捕手」だ。3連覇しても立ち止まらない。
無名だったアマチュア時代も、ケガ続きで始まったプロ野球人生も、挫折が會澤を強くした。
初めて1番手捕手として出場した昨年の日本シリーズでも挫折を味わった。
「しばらく立てなかった。サヨナラで、あれだけ立てなかったのは初めて。それくらい悔しかった。正直、今でも悔しい」
第5戦目にソフトバンク柳田悠岐にサヨナラ本塁打を浴びた。初めて味わう失望感。あの一発がシリーズの行方を決め、広島は日本一を逃した。もっと強くならないといけないと感じた。
捕手として独り立ちした先に、4年連続の頂点も見えてくる。年号が令和となっても、セ界の捕手の主役を譲るつもりはない。