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ブスケッツ、アロンソ級の存在感!
レアル出身30歳D・パレホが凄い。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byUniphoto Press
posted2019/04/19 11:30
リーグ後半戦、快進撃を続けるバレンシア。チームの要として抜群の存在感を発揮するのがダニ・パレホだ。
シャビ・アロンソ級のくさび。
パス能力も格段に上がった。
バレンシアの攻撃はボール奪取からの速攻がメインで、相手の守備組織が整う前にフィニッシュに持ち込むスピーディーな守→攻のトランジションが鍵となっている。
その攻撃において欠かせないのが、パレホが繰り出すくさびのパスだ。
DFライン手前でボールを持った際、大抵のボランチはサイドにボールを散らすなり、後ろに戻すなり、確実につながるパスコースを第一に選ぶ。
しかし、パレホはどれだけ深い位置にいようとも、常に自分より前方にいる選手、特に前線のFWへの縦パスを狙っている。いわゆるバイタルエリアへのくさびのパスである。
このパスで相手の中盤の守備網を破ることができれば、無防備な状態のDFラインに対して攻撃を仕掛けることができる。だが、バイタルエリアはその名の通り、相手が最も警戒している重要なゾーンであり、簡単にパスを通せるところではない。それをパレホはFWがマークを外す動きに合わせ、コントロールが難しい浮き球のフィードではなく、グラウンダーのボールを足元にぴたりとつけてしまう。しかも、多くの場合、ワンタッチやダイレクトで。
これだけ効果的なパスを2列目ではなくボランチの位置からコンスタントに通せる選手はそういない。すぐに思いつくのは全盛期のシャビ・アロンソくらいだ。
守備も向上、プレースキッカーとしても。
さらには弱点だった守備面でも戦える選手に成長した。
ラ・リーガ公式サイトのデータでは、第32節終了時点でのパレホの総ボール奪取数は224回。これは全20チームのフィールドプレーヤーの中では7番目、ボランチに絞ればエベル・バネガ(262回/セビージャ)、ホセ・カンパーニャ(240回/レバンテ)、ロドリゴ(239回/アトレティコ・マドリー)、ルベン・アルカラス(238回/バジャドリー)に次ぐ5番手に位置する。
加えてセットプレーでは鋭く曲がって落ちる必殺のプレースキックで相手ゴールを陥れ、PKも含めてチーム最多の8ゴールを記録。怪我も少なく、今季の全公式戦出場時間はあと2試合で4000分の大台に乗るだろう。
攻守両面で穴のないハイスペックなセントラルMFへと進化を遂げたパレホは、2年前の夏にマルセリーノが言っていた通り、バレンシアを象徴する存在としてファンの喝采を浴びるようになった。