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ブスケッツ、アロンソ級の存在感!
レアル出身30歳D・パレホが凄い。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byUniphoto Press
posted2019/04/19 11:30
リーグ後半戦、快進撃を続けるバレンシア。チームの要として抜群の存在感を発揮するのがダニ・パレホだ。
“造反”で信頼もガタ落ち。
ピーター・リムのクラブ買収で再スタートした'14-15シーズンはヌーノ・エスピリト・サントの指揮下でようやく1シーズン通して活躍することができたが、それも長くは続かない。
その後の2シーズンはギャリー・ネビル、パコ・アジェスタラン、チェーザレ・プランデッリ、サルバドール・ゴンサレス“ボロ”と監督が入れ替わる中でチームと共に不振を極め、神経質な地元ファンから一度ならず容赦ない罵声を浴びせられた。
そんな状況に嫌気がさし、'16年夏にはセビージャ移籍を試みるも、クラブ間で合意に至らず。この“造反”によってファンの信頼は地に堕ち、パレホの気持ちもクラブから離れていった。
指揮官マルセリーノとの出会い。
バレンシアとの関係は、もう終わった。
周囲はもちろん、誰より本人がそう考えていた2年前の夏。移籍確実と見られていたパレホは、新監督に就任したマルセリーノ・ガルシア・トラルの説得により、一転して残留を決意する。
「パレホは素晴らしい選手だ。彼は我々のキャプテンとして、チームの主柱になってくれる。みながそう望んでいる」
全幅の信頼を公言した指揮官の下、パレホは生まれ変わった。現在の定位置は4-4-2のセントラルMF。ワンミスが失点に直結するポジションであり、ビルドアップのキーマンである彼は厳しいチェックを受けることも少なくない。
そんな時、以前なら無駄にボールを持ちすぎて奪われるシーンが度々見られたのだが、今では不用意なボールロストが激減した。たとえ2、3人に囲まれても焦ることなく、ひらりと包囲網をすり抜ける。マーカーをあざ笑うように食いつかせては逆を突く憎らしいプレーは、例えばセルヒオ・ブスケッツと比べても遜色ないレベルだ。