スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
ブスケッツ、アロンソ級の存在感!
レアル出身30歳D・パレホが凄い。
posted2019/04/19 11:30
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
Uniphoto Press
実のところ、あまり好きな選手ではない。
トップ下で起用するには得点力に乏しく、足は遅いし判断も遅い。かといってボランチで使えるかといえば、守備面で求められる球際の強さや運動量、機動力が足りない。それ以前にイージーなミスが多すぎて、ポジションに関わらず安定したプレーが期待できない。
言ってしまえば中途半端にうまいだけで、実戦では使えない選手――。
それが数年前までの彼の印象だった。
そんな選手のことをなぜ今回、取り上げることにしたのか。そうせざるを得ないほど素晴らしい選手に成長してしまったからだ。
バレンシアの主将であり、10番を背負うダニ・パレホ。タレ目と天然パーマが特徴の30歳は、現在ラ・リーガで最も脂の乗ったMFの1人である。
レアル下部組織出身の30歳。
若い頃は、あのアルフレド・ディステファノが「ラ・ファブリカ(レアル・マドリーのカンテラの愛称)最高のタレント」と絶賛したことで注目を集めた。
だが、結局トップチームではレンタル先のクイーンズ・パーク・レンジャースから呼び戻された2008-09シーズン後半に5試合計80分のプレー時間を刻んだだけで、ほぼノーチャンスのままヘタフェに放出されている。
ヘタフェでは2シーズンに渡って活躍して株を上げたが、'11年夏のバレンシア移籍後はクラブの迷走に巻き込まれ、起伏の激しいシーズンを繰り返してきた。
ウナイ・エメリやマウリシオ・ペジェグリーノ、ミロスラフ・ジュキッチの下ではベンチを温め、定位置を掴んだエルネスト・バルベルデ、フアン・アントニオ・ピッツィ体制は半年しか続かなかった。