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<進化を続けたイチロー>
ラストプレー「3.78」。
走力は最後まで伸びていた。

posted2019/04/15 15:00

 
<進化を続けたイチロー>ラストプレー「3.78」。走力は最後まで伸びていた。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

現役最後の打席、遊ゴロで一塁へ全力疾走。到達タイムは3.78秒だった。

text by

笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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photograph by

Naoya Sanuki

走攻守、すべてにおいてハイレベルな技術を備えたイチローが、
40歳を超えても進化し、可能性を示したのが「走塁」だった。
驚異の一塁到達タイムと盗塁に込められた超一流の哲学――。

 2019年3月21日、午後9時27分、東京ドーム。4対4で迎えた8回2死二塁の勝ち越し機。

 イチローはメジャー通算10734回目の打席に向かった。

 満員の46451人のファンは「イチロー」コールを送り、メジャー通算3090安打となる勝ち越し適時打を望んだ。

 ベンチではマリナーズナインが総立ちで固唾を呑み、歴史的打席に食い入った。その中、菊池雄星はひとり目を赤く染め、涙していた。

 カウント1-2。救援右腕トリビーノが投じた144kmのスライダーを叩いた打球が遊撃前へ転がる。

 歯を食いしばり、鬼の形相でイチローが一塁を走り抜ける。

「セーフ」か「アウト」か。

 微妙なタイミングに場内が静まり返った瞬間、塁審の右手は無情にも上がった。大きな溜息に場内が包まれる中、手元のストップウオッチへと目を移すと驚きの数字が目に飛び込んできた。

「3.78秒」

 この試合で現役を引退する45歳の選手とは思えぬ到達タイムだった。

 本塁から一塁へ。4秒を切れば俊足と評価されるメジャーリーグに於いて、イチローは2015年シーズンに平均でメジャー全体で5位に入る「3.98秒」を記録した。

 上位4選手は、20代半ばの若手選手ばかり。この数字に全米中が震撼し、「驚異の41歳」と称えた。

 2016年シーズン。イチローの足は更に進化した。下半身を鍛え上げ、ハムストリングからふくらはぎにかけての筋肉は厚みを増した。

 股関節の強化と柔軟性を高めるトレーニングにも取り組んだ結果、走る姿が以前にもまして美しくなった。頭の位置は上下動することなく一定に保たれ、ストライドが更に広がったのだった。

この記事は雑誌『Number』の掲載記事です。
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