福西崇史の「考えるサッカー」BACK NUMBER
福西崇史「もっと強引に、でいい」
中島翔哉と柴崎岳のような積極性を!
text by
福西崇史Takashi Fukunishi
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/03/27 18:00
南米を相手にした2試合通じて、積極的な仕掛けが際立っていた中島。
失敗を恐れない乾、安西には工夫が見えた。
ボリビア戦のスタメンで言えば、乾は周囲とのタイミングが合わずボールを奪われることがありましたが、失敗を怖がらない姿勢は大事です。
ボールの出し手であれば、もし縦パスが通らなくても、相手に「嫌なところを狙ってきているな」と怖さを与えられる。サイドバックのクロスにしても、コーナーキックを1つ取れるかどうかでその後の局面は変わります。左サイドバックに入った安西は何度も攻撃参加と守備に戻る動きを繰り返しつつ、時には中に入り込んで“宙ぶらりん”の位置をとるなど工夫が見えました。
だからこそ、ボールを受けた際には序盤から積極性を出してほしかったところです。
アグレッシブだった柴崎と中島。
ADVERTISEMENT
そういったアグレッシブなパフォーマンスを見せてくれたのは、やはり柴崎と中島でした。柴崎は味方がスムーズに次のプレーに移れるような気の利いたパスを随所で出していました。W杯やアジアカップに出場するなど、周囲の選手に比べて経験値を積み上げてきて、チームを引っ張る自覚がピッチ上で出てきた印象で、とてもいいことだと思います。
そして中島については、ボリビア戦のゴールという結果だけでなく、その影響力の大きさを感じさせました。
カタールに移籍後初となる代表招集でしたが、ドリブルのキレは南米の選手を相手にしても十分通用しているな、と。鋭い切り返しに相手マーカーも後手を踏んでいましたよね。
守備陣にとってドリブルで1人、2人と引きずり出されていくのはすごく嫌です。それは日本にとってものすごいメリット。中島が1人で仕掛けることによって相手がカバーに入れば、周りの選手のスペースが空いて余裕ができる。つまり数的優位を作り出せるわけです。
中島がボールを持つことで攻撃のバリエーションも広がりました。中島が左サイドで起点となりつつ逆サイドに展開したり、彼のキープから安西も思い切りよく深い位置まで攻め込むなど、リズムの良さを生み出していた。これは中島のプレーが相手に“怖さ”を与えていたからこそです。
中島や柴崎が見せた積極性は、チーム全体にいい流れを呼び込んだ。だからこそ選手それぞれがリスクを見極めて自分のところで仕掛ける意識を持てるか。そこが進化のポイントになるはずです。
(構成・茂野聡士)