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安西幸輝に昌子源が「羨ましい」。
代表デビューで得たのは成長の種。
posted2019/03/28 11:15
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
AFLO
「積極的にやるだけだ」
3月26日ノエビアスタジアム神戸。日本対ボリビア戦のキックオフを迎える瞬間、安西幸輝は落ち着いた心持ちでピッチに立っていた。試合前日練習で、先発出場がわかったときの緊張感からは解放されている。
初めての日本代表選出。コロンビア戦では89分から途中出場した。1点を追う展開だからこその起用だった。
「森保監督からは『点をとりにいくぞ』と言われた。そのためには僕がドリブルで仕掛けることが大事だと思っていた。守備も大事ですけど、負けていたので。もう少し出場時間が長ければ、もっと自分の色を出せたはず」
数分間であっても、安西は「世界」を体感した。プレースピード、ゲームスピード……Jリーグとはまったく違うサッカーを目の当たりにして、「もっと長く試合に出たい」という欲が高まった。
攻撃も守備も、全てが足りなかった。
「招集した選手は全員使ってあげたい」という森保一監督は、第2戦のボリビア戦で先発全員を入れ替える。そして、安西は左サイドバックで先発した。
「前半は気合が入りすぎて飛ばしすぎだったんですけど、後半はうまく合ってきてチャンスも作れた。乾(貴士)君がタメを作ってくれて、うまく上がることもできた。他の選手も初招集、初先発の僕を活かそうとしてくれてありがたかったですね。
僕に求められているのはSBからの攻撃の部分、ゴールとかアシストだと思う。でも最後の精度が悪くて、今日は仕事ができなかったと感じている。もっと大胆にやっても良かった。
この1回のチャンスをものにしなくちゃいけないのは痛感しています。でも今回の代表での10日間は刺激的だったし、ここで培ったものを自分の成長に繋げていきたい」
形は作ったし、いいクロスもあげたが、結局ゴールを生み出すことは叶わなかった。そして、安西の仕事は攻撃だけではない。守備面でも課題だけが残った。
「自分が持つべき能力がなんなのかが明確になった。守備の1対1だとか、ファールギリギリのところで止める守備だとか、最後の攻撃のクォリティだとか、あとは試合のなかのスピード感にもっと慣れないと僕自身がチームに貢献できない。意識してプレーしたけれど、足りなかった」
パワー、スピード、フィジカル、外国人選手特有の間合い……。Jリーグでは体験できない世界を、青いシャツを着て味わった。追いかける「長友佑都」という存在に、自分がまだ到底及ばないという危機感と焦りに似た感情も芽生えた。しかしそれは、漠然と描いていた「上へ」という目標が明確になった証拠でもある。