One story of the fieldBACK NUMBER
殿堂入りの名伯楽・権藤博が説く、
「球数制限には大反対!」の根拠。
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/03/28 17:05
プロ入り5年でピッチャーを諦めざるを得なかった選手として……権藤博氏は今の球数問題に違う角度からの解決策を示した。
球数を制限する前に、日程を論じろ!
肩や肘を壊さない正しい投げ方を教えられる指導者がどれだけいるのか。
学校教育の一環としての部活動である「高校野球」がその枠の中で選手に配慮した大会スケジュールをいかに組んでいけるか。
球数を制限する前にもっと議論すべきこと、着手すべきことがあるのではないか、というのが権藤の言葉の真意だった。
「やるのは選手なんですよ」
権藤は強制を嫌う。
権藤「指導者の仕事というのは、誰が使えるか、を見極めること。監督の言うことをはい、はいと聞いている選手というのはいざとなったら頼りにならない。
いわゆる、俺は俺のやり方でやるというような、やんちゃな選手の方が頼りになることが多い。誰が困った時に力を出せるのか。それを見極めたら、あとはその選手に任せるしかない。やるのは選手なんですよ」
そういう意味で言えば、「最後まで投げろ」、「今日も明日も投げろ」というのも強制だが、「100球で降りろ」というのもまた強制である。
高校野球界の名指導者の中にも、球数制限によって投手を守るというやり方には異を唱える人もいる。
今回は『肩の酷使によって短命で終わった悲運のエース』という、パブリックイメージのある権藤の言葉だけに、また考えさせられる。