Jをめぐる冒険BACK NUMBER
J2山口・霜田監督の指導法が面白い。
「極端」と「正直」で選手を刺激。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2019/03/27 17:00
単独インタビューに答えてくれた霜田正浩監督。レノファ山口での日々は新鮮なようだ。
ヴァイッドから学んだこととは。
――選手をフラットに見て、フラットに競争させるために心がけていることはありますか?
「これは、(元日本代表監督の)ヴァイッド(・ハリルホジッチ)から学んだことなんだけど、正直になること。そのプレーはダメだって、みんなの前ではっきり言っちゃう。(キャプテンの)三幸(秀稔)にも言うから。よく『褒めるときはみんなの前で、怒るときはふたりだけで』って言うでしょう。
でも、僕の考えはそうじゃない。だって、僕が怒っているのは、その人じゃなくて、プレーだから。このプレーはOKだけど、このプレーはダメ。ダメなプレーをしたら、三幸だろうと、誰だろうとはっきり言う。そうすることで、みんなに『このプレーはダメなんだ』って分からせたいし、『三幸は絶対に外されないんでしょ』っていうことを思わせないようにしてる。
この前も『こういう理由で(高木)大輔を先発させて、パウロは途中から』ということをみんなの前で説明したの。選手に対しては常に正直でいたい、というのがあるからね」
――レノファの立ち位置を考えると、選手を成長させる=引き抜かれる、ということでもあります。実際、小野瀬選手やオナイウ選手は巣立っていきましたが、そのことについて、どう考えていますか?
「いろんな意見があると思うけど、世界のフットボールの論理からすると、当たり前のことだからね。そこに金銭的補償があれば、次の選手を獲得できるわけだし、ウェルカムです。もちろん、康介の移籍はシーズン中のことだったから、ストレートに戦力ダウンになった。クラブとしても初めての経験だったんだけど、それも良い経験。だってブラジルなんて、同じ選手で1シーズン戦うことはまずないから。
それに、康介がガンバで活躍してくれたおかげで、『康介ができて、なんでお前たち、できないの?』って言えるし、康介のステップアップを見て、うちに来てくれる選手もいる。グッド・イグザンプルなんだから、どんどん行ってくれて構わない。それを止めるという選択肢は、僕にはないですね。シーズン終了まで半年待たせて、そのときにまたガンバから話が来るとも限らないし」
――そういう世界ですからね。
「タイミングって大事だからね。他のJ2のクラブからだったら、止めていたかもしれないけれど、J1だし、ガンバだからね。ヤット(遠藤保仁)や今ちゃん(今野泰幸)と一緒にできる機会なんて滅多にないから、僕からすれば、『行ってこい』ですね」
(後編に続く)