Jをめぐる冒険BACK NUMBER
J2山口・霜田監督の指導法が面白い。
「極端」と「正直」で選手を刺激。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2019/03/27 17:00
単独インタビューに答えてくれた霜田正浩監督。レノファ山口での日々は新鮮なようだ。
采配以上に尽力するもの。
――若い選手たちの能力を開花させるうえで大事にしていることは何ですか?
「モチベーションって簡単に言うけど、本当のモチベーションって、与えられるものじゃなくて、自分の中から湧き出てくるものなんだよね。だから、僕ができることは、ここで、この練習をすれば絶対にうまくなるな、って選手たちに感じさせること。選手の承認欲求や知的欲求を満たしてあげられるかどうか。
だから僕は、トレーニングやミーティングに全力を尽くす。ある意味、試合での采配以上に、そこに全力を尽くしているかもしれない。その結果として勝てるというのが良いサイクルだと思っています」
――最近の具体例というと?
「例えば、最近のCLでバイエルン対リバプール戦があって、走行距離のデータが手元にある。『この両チームは、あの試合でこれだけの距離を走っていた』って伝えると、選手たちは驚くんだけど、『でも、うちだってこの前のジェフ戦では、こんなに彼らよりも走ってるんだぜ』と。『テレビの向こうの世界の話じゃないんだよ』と。
僕はいつも選手たちに世界のサッカーの映像を見せるけど、ベティスでも、ローマでも、参考にできるプレーはどんどん取り入れようって。それをずっと続けています」
――昨シーズン、大卒ルーキーの山下敬大選手を開幕から6試合連続途中出場させ、7試合目でスタメン起用した一方、同じく大卒ルーキーの楠本卓海選手は14試合未勝利で迎えた35節にいきなりスタメンで初起用しました。若手を出場させる際に気をつけていることは?
「敬大の場合は、ストロングポイントがはっきりしているけど、ちょっと器用貧乏なところがあってね。サイドも、センターフォワードも、インサイドハーフもやれるし、守備のときにヘディングで勝てるからボランチでも起用したことがある。大学の4年間で半分くらいケガをしていて、テスト生で入ってきた選手」
――そうなんですね。
「シーズン前の熊本キャンプで獲得を決めたんだけど、そういう選手だから大事に、焦らず、少しずつ出場機会を増やして慣れさせようと思っていたの。そうしたら結果として35試合に出て5点を取った。チャンスをしっかり決めていたら、ふた桁は取れていたほどストライカーとして成長してくれた。
逆に、楠本はウイークポイントがはっきりしていて、そこがチームの水準まで改善されないと起用できなかった。僕が使わないということだけじゃなく、周りからも認められない。ただでさえ試合に勝たなきゃいけないプレッシャーがあるのに、味方からのプレッシャーも感じると、選手って潰れちゃうから。あのタイミングで起用したのは、チームメイトがみんな『もうそろそろ楠本、いいんじゃない?』って思うようになっていたから」
――その成長が、ようやく秋口に。
「周りの選手たちが認めていたから、チャレンジしたんです。2センターバックのひとりとして起用するのはリスクがあったけど、3枚のひとりなら十分やれるだろうと。そうしたら、すごくハマったね」