Jをめぐる冒険BACK NUMBER
J2山口・霜田監督の指導法が面白い。
「極端」と「正直」で選手を刺激。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2019/03/27 17:00
単独インタビューに答えてくれた霜田正浩監督。レノファ山口での日々は新鮮なようだ。
「極端」じゃないと浸透しない。
――ブランディングを重視した1年目だからこそ、あえて目をつむる部分があったようにも感じました。
「それは確実に、意図的に。『攻めながら守り、守りながら攻める、攻撃と守備を分けないで考えるトータルフットボールをやろう』とずっと言ってきて、たくさん点を取ったけど、たくさん取られもした。失点の要因ははっきりしていたんだけど、避けたかったのは、そこだけにフォーカスして、守備だけ、失点をしないように守るだけのサッカーに変えてしまうこと。だから、あえて守備だけに特化することはしなかった、という感じです」
――攻撃と守備を分けない、攻守において矢印を相手の前に向ける、というコンセプトをスムーズに浸透させるために工夫したことは?
「極端なことをしないと浸透しないと思ったから、選手たちには極端なことを言い続けました」
――例えば、どんなことですか?
「とにかくボールを全部獲りに行けと。連動しようとか、そんな格好いいことではなく、1人目が行って獲れない、2人目が行っても獲れない、でも、6人目で獲れればいいよって。6人目で獲れたら、目の前に5人いる。そうしたら、そのままゴールに向かえるよねって。戻ることはあっても下がるな、という話もした。極端なことを言ったほうが分かりやすいし、迷わない。
だからもう、最初は白か黒か。微調整をするのは、うちのサッカーはこうだって、みんなが理解してからでいい。うちの選手たちが『躍動感がある』とか、『イキイキしている』とよく言われる理由って、そこなんじゃないかな」
――レノファにとって「躍動感」は重要なキーワードですね。
「そう。でもそれって見る人が感じることだからね。だから、コンセプトには情熱的っていう言葉も入れて。じゃあ、躍動感が伝わるためには何をすべきか。それを1年間、具体的に言ってきた。プレスに行くときは100%で行けとか、1人目がかわされても、後ろから追いかけて来いとか」
――練習メニューも、そういうことを体現できるように、あの手この手で。
「行かざるを得ないようなルールにしてね」
――ブランディングという点では、オナイウ阿道選手(現大分トリニータ)が22得点を奪い、小野瀬康介選手は半年で10得点をマークしてガンバ大阪に引き抜かれたことで、「レノファに行けば、成長できる」というブランディングにも成功したのでは?
「それを実感できたのは去年12月、今季の編成をしていたときですね。(佐々木)匠も、(吉濱)遼平も、(田中)パウロ(淳一)も、他のJ2クラブから声が掛かっていたのに、うちを選んでくれた。
匠なんか、(所属元のベガルタ)仙台から『戻ってこい』とも言われていたのに、うちに来てくれた。現状ちょっとモヤモヤしている選手たちが、康介や阿道の姿を見て、自分も山口に行ってサッカーがうまくなりたい、成長してステップアップしたい、と思ってくれたんだとしたら、嬉しいですね」