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久保建英が1つ突き抜けたきっかけ。
「俺が俺が、ではなくコンセプト」
text by
塚越始Hajime Tsukakoshi
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/03/25 08:00
17歳ながらハイパフォーマンスを見せる久保建英。Jリーグで今こそ見ておきたいタレントだ。
バランスの中で個が生きた。
もちろん、それを可能にしたのは、まず久保の高い技術と能力があってこそ。その時ちょうど横浜F・マリノスのチームメイトだった山田康太は言っていた。
「タケ(建英)には、気持ちよくプレーしてほしいと考えてやっていました。あいつがパスを出してほしいタイミングやテンポも分かっているつもりなので、そこに合わせて、上手くできればと思っていました」
そういったチーム全体のバランスの中で、久保の個が生きた。もちろん“チームあっての個”ということは頭では分かっていたが、それをよりストレートに体感できた大会になったようだった。
「俺が俺が」ではいけない。
今季、復帰したFC東京ではリーグ開幕から全試合で先発し、首位のチームを牽引している。長谷川健太監督は久保について、「横浜F・マリノスへ期限付き移籍したことで子供だったメンタルが大人になってきた」と評していた。
そして久保自身も「サッカーはチームスポーツ。『俺が俺が』ではいけない。チームの勝利が最優先で、選手の特長はそれぞれあっても、まずコンセプトのところができなければ試合には出られない。それを10代の早い時期に分かったのは大きかったです」と語っている。
ピッチ上でのギブ・アンド・テイクの関係。それぞれの特長をどのように引き出し合い、どこで生かすのか。補完し合うつながりが、チームとして有機的に機能する。その“楽しさ”にも新たに気付けたのかもしれない。
かといって、久保のプレーが小さくなったわけではない。どこまで自我を出し、どこまでチームのために我慢するのか。そのバランスの模索は今後も続く。
ただ、ボールを持った時の堂々と自信を持ったマタドールのように勇ましい姿勢は、対峙したものを圧倒する雰囲気が漂う。