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久保建英が1つ突き抜けたきっかけ。
「俺が俺が、ではなくコンセプト」
text by
塚越始Hajime Tsukakoshi
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/03/25 08:00
17歳ながらハイパフォーマンスを見せる久保建英。Jリーグで今こそ見ておきたいタレントだ。
将棋の感想戦のように振り返る力。
3月17日のホームでのJ1第4節の名古屋戦(〇1-0)。63分、ドリブルで持ち込んだ永井謙佑には久保へのパスの選択肢もあったが、永井はシュートを放った。そのこぼれ球に反応した久保は、GKの逆を取っていたが……利き足とは逆の右足のシュートを外して今季初ゴールを逃した。
「もう10回ぐらいリプレイを見ましたが、入っていなかったですね」
久保は試合後、そのシーンについて将棋の感想戦のように、ひとコマずつ心理を明かしていった。
「あれ(永井のシュート)は僕がよく作っている形でもあるけれど、ボールを持っている選手として選択するところ。だからシュートを打った瞬間、自分も次のプレーに切り替えられました。それができたので、そこまでは良かったです」
ゴール前でチャンスを作り出した永井がパスかシュート、どちらを選択しても対応できる態勢を取っていた。そこでこぼれ球に反応できたまでは良かった。だが、シュートを外してしまった。
「ゴールキーパーが出てきているのが見えて、落ち着いて流し込めるかなと思ったんですけど意外と角度がなくて、サイドネットでした。あれは悔しかったです」
そこは責任を持って、仕事を“フィニッシュ”させなければいけなかったと猛省していた。一方、攻撃面だけではなくプレッシングにも久保は好感触を得ていた。名古屋相手に何度かボール奪取からショートカウンターにも持ち込んでみせたのだ。
「何度かボールを奪って前へ持っていくシーンがありました。そこでもっと加速力というか、もっと斜めに、斜めに、相手の嫌がるところへ入っていければいいかなと思いました」
U-22にも「還元していくだけ」。
名古屋戦のあと、Jリーグが中断される代表ウィーク期間に突入した。久保はチームメイトの田川亨介らとともに、タイU-23アジア選手権予選に臨むU-22日本代表に選ばれ、ミャンマーに向かった。代表ではどのようなプレーを見せたいか――その問いへの答えは簡潔だった。
「チームでできていることを、そのまま代表に還元していくだけです。そこはいつもの通りです」
彼は短い言葉に決意を込めた。