プレミアリーグの時間BACK NUMBER
驚愕の交代拒否も「ケパの功名」。
サッリのチェルシーが失地回復中。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byUniphoto Press
posted2019/03/05 11:00
チェルシーで突如巻き起こったケパ(右)とサッリ監督の騒動。カバジェロとしてみれば何とも言えない気持ちだっただろう。
ケイン、ソン・フンミンを完封。
英語で「肝っ玉」は“balls”。サッリが「ボールズ」を披露した一戦での勝利により、周囲も「サッリボール」を見直した格好だ。
調整が施されたチェルシーの戦術は、基本的にマンC戦と同じだった。ワンパターンと不評なマテオ・コバチッチとロス・バークリーを入れ替える交代ではなく、3センターの一角に若いルーベン・ロフタス・チークを投入する交代策もその1つだった。
ピッチ上の選手たちからも、ケパの行動で辱めを受けた第2GKのために闘うという気概が感じられただ。カバジェロは彼らの思いに応え、怪我から復帰したハリー・ケイン、絶好調のソン・フンミンらを擁するトッテナムを完封した。
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最終ライン中央ではダビド・ルイスとアントニオ・ルディガーが、いるべき時にいるべき所でクリアやブロックを繰り返した。またストライカー並みに攻撃的な左SBマルコス・アロンソもバランスを取り、後方のスペースを念頭に置いていた。
そして逆サイドのセサル・アスピリクエタには、キャプテンとして汚名返上を期す意気込みも感じられた。
アスピリクエタが主将らしく。
マンC戦、PK戦を戦いたいケパの心境もわかる一方、ケパを説得するリーダーの不在が残念に思えた。当日、テレビのゲスト解説者としてウェンブリーにいたジョン・テリーがいたら、ユニフォームを引っ張ってでも、監督の決定に従っていただろう。
あの瞬間、傍観者だった現主将のアスピリクエタは、トッテナム戦後半に苛立ったケインがD・ルイスと火花を散らしそうになると、相手FWから頭突きを食らいそうになりながらも即座に両者の間に割って入ったのだ。
そんなアスピリクエタからのラストパスを受けて、相手GKウーゴ・ロリスの股間を撃ち抜いたのはペドロ・ロドリゲスだ。ペドロは数分後、自軍ゴール前でタックルに成功し、ドリブルでカウンターに転じてもいる。
ペドロの活躍は、サッリが再評価された試合に打ってつけだった。就任直後から「オフザボールでの動きはチーム最高」と買っていたのが、3トップ右サイドのペドロなのだから。
サッリがこだわるポゼッション率は47%対53%でトッテナムに譲った。今季勝利したリーグ戦では、昨年12月のマンC戦(2-0)に次いで低いボール支配率だ。だが、前半押されっ放しながら無失点で終えた前回対戦とは違い、終盤のゲームマネジメントも巧みだった。敵陣内で攻め続けるスタイルを信条とするサッリが、敢えて攻め上がらずにリードを守る戦い方もよしとしたのだ。