Sports Graphic Number SpecialBACK NUMBER
<助っ人エース8年物語>
ランディ・メッセンジャー「ウィニングボールの絆」
text by

吉田風(デイリースポーツ)Kaze Yoshida
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/08/01 06:00

えっ??
阪神タイガースの番記者は、みんなキョトンとした。互いに目を見合わせ「今、言ったよな……」と、自分たちの耳を疑いながら背番号6を見送った。
あのとき、金本知憲は確かに言った。「開幕投手は、ほぼメッセでしょう」。昨年10月14日の「公式」コメントである。
2016年シーズンの最終戦から2週間もたたない秋季練習でのことだ。監督2年目をスタートさせた金本は、甲子園球場の一塁側ベンチで囲み会見に応じていた。この年初めて10勝を挙げた岩貞祐太の話題になると、期待値が大きいゆえ、饒舌になった。取材の流れで、岩貞も'17年の開幕投手候補になるのか? と、少し気の早い質問も飛んだ。選手に発奮を促す意図でリップサービスを忘れない将だ。期待しているし、頑張って欲しい――そんな類の返答があるかと思いきや、金本は真顔で首を横に振った。「いや、それは行き過ぎじゃないかな」と。
そして前述の発言につながるわけだが、報道陣は少し戸惑っていた。練習後の和やかな囲みとはいえ、球団広報が設定した定例会見である。そもそも、ランディ・メッセンジャーはまだ正式に阪神との契約を更新していなかった。翌春のシーズン開幕まで、5カ月以上。しかも、「開幕投手」といえば新聞社がスクープを競う“案件”でもある。それを、あっさりと「ほぼ決まり」と公言してしまったものだから、会見の輪がとけた後、その場は何とも言えない空気になった。
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
ウェブ有料会員になると続きをお読みいただけます。
残り: 3031文字
ウェブ有料会員(月額330円[税込])は、この記事だけでなく
NumberWeb内のすべての有料記事をお読みいただけます。