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<銅メダリストの矜持>
カヌー・羽根田卓也「鋼の意志を貫いて」
text by

伊藤華英Hanae Ito
photograph byAFLO
posted2016/09/19 17:00

羽根田卓也、29歳。
リオデジャネイロ五輪のカヌー・スラローム男子カナディアンシングルで、アジア人として初めて銅メダルを獲得した。
スラロームは、激しい水の流れの中でスタートからゴールまで、水の強さと向き合いながら進む。カヌーを操る技術と速さ、ペナルティポイントをいかに少なくするかが得点に繋がる。昨秋のプレ五輪大会では、本番と同じコースで2位。五輪直前の6月に行われたW杯では、日本人初の3位に入り、自信を高めて臨んだ本番だった。
「この1年が一番強くなった実感がある」
羽根田は少しずつ、しかし確実に成果を感じていた。
準決勝を6番通過で迎えた決勝。
上位の選手たちが、ミスを重ねる中で、羽根田は自分のレースだけに集中していた。スタートは「無心で迎えることが出来た」。レースを終えると、カヌーに乗ったまま、「今日だけは、3位以内で」と心の中で祈りながら、他の選手たちの結果を待った。
“羽根田卓也、銅メダル獲得”
この瞬間をどれだけの日本人が見ていたのだろうか。日本はもちろん、アジアでも初めての快挙だった。
結果が分かった瞬間、涙が溢れた。普段の羽根田は朗らかで穏やか、そしてクールなタイプだ。そんな彼が、身体を震わせ、泣いた。銀メダルを獲得したスロバキアのマティエ・ベニュシュ選手に肩を叩かれ祝福された姿は、日本中に感動を呼んだ。
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
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