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F1の最低重量10kg増、実は大改革。
長身ドライバー不利は改善するか。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byAFLO
posted2019/02/10 11:00
今季ルノーで同僚となるヒュルケンベルグ(左)とリカルド(中央)はいずれも長身ドライバー。最低重量の新規定を歓迎する。
最低重量「10kg」の見直し。
もうひとつの大きな変更が、最低重量の見直しだ。これが昨年の733kgから743kgに引き上げられた。重量は10kgの変更だが、問題はその中身だ。
F1の最低重量にはドライバーも含まれる。セッション中にFIAが抜き打ちで車重の検査を行う際、ドライバーがコクピットに収まったまま行なう方がスムーズだからだ。
その結果、体重が軽いドライバーと重いドライバーでは、マシンそのものの重さが変わってくるという事態が発生するようになった。
正確に言えば、最低重量は決まっているので、一般的にチームは2人のドライバーの重いほうに合わせてマシンを製造し、軽いほうのドライバーが乗るマシンには、バラストと呼ばれるおもりをマシンの底部にはめ込むことで最低重量をクリアする。
つまり、同じ最低重量のマシンでも、体重が軽いドライバーと重いドライバーでは重心が異なる。先にも述べたように、近年のF1マシンは、空力の進化によってコーナーリングスピードが著しく上がった。
遠心力は速度の2乗に比例して大きくなるため、マシン底部にバラストを積める小柄のドライバーより、重心が高くなってしまう大柄のドライバーのほうが、条件は不利になる。
長身ドライバーが過酷な減量。
そこでこの数年は、長身ドライバーの多くがプロボクサー並みの減量を行なうようになった。中には筋肉を落とすためにウェイトトレーニングを減らすという、アスリートとしては理想的とは言いがたいダイエットを行う者まで出てきた。
こうした事態を憂慮したFIAは、打開策として今シーズンから最低重量の仕組みを変えた。
これまでは車体とドライバーを単純に足していたが、今年からはドライバーの最低重量を80kgに設定。この重さにはシートも含まれているため、小柄なドライバーはシートにバラストを積まなければならなくなった。それでも、体重が軽いほうが有利であることに変わりはないが、バラストを自由に搭載できた昨年までに比べれば、その差は縮まる。