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黒田博樹と北別府学、前田健太が
語った「カープのエース」の伝統。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2019/01/16 16:30
黒田博樹(左)と北別府学。球団にとってのレジェンドが、カープのエース論について語り尽くしてくれた。
どれだけイニングを投げるか。
確かに試合数の変化はあるが北別府はカープの実働19年間で投球回数が200回を越えているのが7シーズン、黒田は最初の広島時代の11年間で2回だけだが、前田はカープの8年間で半分の4回も200イニングをクリアしている。
「もちろん前日の試合までにリリーフを使っていて『きょうは最後までいってくれ、次は中6日でいいから』というのもあります。ただ10点も差が開いたら、別にもういいじゃないですか。7回とかでマウンドを降りて、次は中4日、中5日でという相談があるなら。
もちろん僕だって完封して最後のマウンドにいる瞬間が一番嬉しい。でもエースとして何が大事かといえば完投というよりも、どれだけたくさんの試合に投げて、どれだけのイニングを投げるか。そこが大事だと思うんです」
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完投に限らずとにかく他チームのエースと比べて、より多く投げる。それがカープのエースの伝統だと考えれば、前田も黒田や北別府と同じ系譜の投手ということになるわけだ。
新しいエース像を。
ただ、前田はそういうカープらしさにとらわれずに新しいエース像を切り開くことも大切だ、と考える投手でもあった。
「カープってちょっと怖いイメージありますよね。近寄りがたいというか。そういう球団だったじゃないですか。昔ながらの練習風景があって、ちょっと“男”とか“男気”のあるというか、そういう選手が多かった。僕はそれを変えたかった」
入団直後に地元のテレビ番組で球団OBの投手が「エースとは近寄りがたい存在でなければならない」と語るのを観た。「でも『オレは違うな』と思ったんですよ。無理矢理、自分がそういう古くからあるエース像に寄せていく必要もないかなと。
僕はどんどん後輩とかとコミュニケーションをとってやりたいタイプで、みんなが近づいてくるようなエースになりたいと思ったんです。投手陣の中でみんなが慕ってついてきてくれて、みんなが気軽に相談できる存在でありたいと思っていました」