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クルトワからの9.35秒を味わって。
長友佑都はもっと走りを追求する。 

text by

松本宣昭

松本宣昭Yoshiaki Matsumoto

PROFILE

photograph byMiki Fukano

posted2019/01/07 10:30

クルトワからの9.35秒を味わって。長友佑都はもっと走りを追求する。<Number Web> photograph by Miki Fukano

10年間にもわたって日本の左サイドを務め続けてきた長友佑都。その意欲は今もなお盛んだ。

金髪になった時の心持ち。

 ポーランド戦翌日の発言にかぎらず、チームの一体感を高め、雰囲気を良くするためには何でもやった。5月30日のガーナとの壮行試合に敗れ、翌日発表されたW杯登録メンバーにベテランが多いと批判が集まると、自身のSNSにこう投稿した。

「年齢で物事判断する人はサッカー知らない人。」

 オーストリア合宿に入り、スイスとの強化試合で完敗を喫した夜には、髪を金色に染め、体を張って明るい話題をつくった。

「チームの空気を、思いっきり変えたろうと思ったんです。僕自身、ぎらぎらした気持ち、戦闘モードで臨みたかった。深夜2時ごろでしたけど、試合の日の夜は眠れないので、この時間を利用して染めました。ブリーチってこんなに痛いのかって、びっくりしましたけどね(笑)。

 あの時期は、チームも半年間勝てず、いろいろなところで批判されているのも目にしていましたし、すごく悔しかった。ただ、“このままフィジカルコンディションを整えれば、絶対にW杯で活躍できる”っていう自信もあったんです。批判されても見返せるという自信があったからこそ、俺が批判の矢面に立ってやろうって」

コロンビア戦後に香川と会話。

 自信は、現実となった。コロンビアとの初戦で、力強い守備を披露。「最高の選手。だからこそ絶対に負けたくなかった」クアドラドとのマッチアップも制し、ブラジル大会のリベンジを果たした。

 この夜、宿舎のプールで香川真司と1時間近く話し込んだ。

「4年前のことを振り返っていたんです。4年前も、初戦の後に真司といろいろな話をしたことを思い出しながら。あのときは、初戦でコートジボワールに負けて、ものすごく落胆して、チームの雰囲気も悪い状況でした。当たり前ですけど、あのときとは全然気持ちが違うな、ひとまずこの1勝はデカイな、って。4年間、この一戦にかけてきた部分はありましたし、正直、この一戦に負けたら決勝トーナメント進出は無理だなと思っていたので」

 W杯で勝つために。この4年間、体幹トレーニングやヨガによる体づくりだけでなく、食生活にも徹底的にこだわった。2年前に加藤超也(たつや)シェフと専属契約を交わし、トルコに移籍してからはそれまでの肉中心の食事から、魚中心のメニューに切り替えた。栄養をすぐにエネルギーに分解する効果があるMCT(中鎖脂肪酸)オイルを積極的に取り入れ、「試合の後半も問題なく走りきれる」肉体を手に入れた。

【次ページ】 クルトワがボールを取った瞬間。

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