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川口能活×楢崎正剛「未来のGKへ」
レジェンド守護神対談完全版・後編
posted2019/01/06 11:30
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by
Takuya Sugiyama
川口能活と楢崎正剛による対談が実現したのは、2015年2月。前年のブラジルW杯では、ザックジャパンがグループリーグで敗退し、1月のアジアカップでは、アギーレジャパンが準々決勝で姿を消した後の時期だった。
日本を代表する2人の守護神による対談の完全版。前編に続いて後編では、ベテランとなり、自身が離れた日本代表への思い、そして未来のGKたちへのメッセージをお届けします。
南アの正剛は本当に立派だった。
――'10年南アフリカW杯は、日本のW杯史上初めて2人とも試合出場がありませんでした。
川口 あの大会の正剛は、本当に立派だったと思います。大会前、僕は正剛が守るものだと思っていましたから。そこで岡田(武史)さんが先発から外す決断をしたけど、正剛の振る舞いは素晴らしかったし、僕も見ていて心を打たれました。もし自分が同じような状況になって、同じように振る舞えるかと考えたら、わからない。
楢崎 もちろん、つらいというか、がっかりしたところはすごくあったんです。だけど、チームとしてはW杯を戦うために4年間頑張ってきて、集大成の場で一丸となれるかどうかで、結果は全然違うから。過去のアジア杯やW杯でも、チームの雰囲気によって結果が変わるところは見てきたから。
自分としても「このW杯で最後かな」って気持ちがあったし、悔いを残したくなかった。チームが良い結果を出して、みんなの記憶に残る大会にしたいと思ったんで。その願いだけでしたね。個人的な感情で言えば、本当は試合に出たいし、チャンスだったと思う。でも、そのチャンスを逃している自分に腹が立った部分もありました。
――チームがまとまるという意味では、'06年ドイツ大会の教訓もあったのですか。
楢崎 それもあったでしょうね。良い時期の代表チームと、結果が出なかった代表チームとでは何が違ったのかと考えると、やっぱりチームの雰囲気だから。
川口 勝てるときの代表って、チームがすごくまとまっている。逆に、勝てていないときの代表は、なんとなくレギュラーとサブの選手で分かれてしまう。そんなときに、一声かけられるような選手がいると、ぐっとまとまるし、良い雰囲気をつくれる。それを形式的にやるんじゃなくて、心からやれる選手がいる代表チームは、強いですよね。“仲良しグループ”とは違う、真のまとまりというかね。