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羽生結弦、通訳への温かい心遣い。
ロシア人大学院生が明かす舞台裏。 

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及川彩子

及川彩子Ayako Oikawa

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photograph byAyako Oikawa

posted2018/12/29 07:30

羽生結弦、通訳への温かい心遣い。ロシア人大学院生が明かす舞台裏。<Number Web> photograph by Ayako Oikawa

筑波大の国際スポーツアカデミー「TIAS」に在学中のカリナ・ガレエワ。

世界陸上、ソチを経て日本へ。

「日本語、ロシア語に訳す時に、選手の思いがきちんと伝わるように適切な表現を選ぶのに苦労します。羽生選手は私がうまく訳せるように、言葉の選び方はもちろんですが、言葉の間の取り方やタイミングなども心遣いをしてくれたので、リラックスして仕事ができました」と振り返る。

 幼い頃から日本の漫画が好きだった影響で、高校は片道1時間半かけて日本語を学べる学校へ。その後、ロシア最高学府のモスクワ大学に進学したが、卒業後の進路は明確ではなかった。「将来はロシアに進出している日系企業に就職できれば」、そう話していた。

「ソチ五輪のボランティアには応募したので、その前年に行われたモスクワ世界陸上のボランティアにも声をかけられました。どちらもメディア担当だったので、人と接すること、相手の立場に立って仕事をする力、また通訳などの面白さ、難しさを学ぶことができました」

「TIAS」の修士に進学。

 カリナはその後、北海道大学に1年間留学。モスクワ大学を卒業後、スポーツの勉強をするために筑波大学に設置されたスポーツ・オリンピック学の学位プログラム、国際スポーツアカデミー「TIAS」の修士に進学している。このプログラムは2020年の東京オリンピックの開催決定に伴い、政府事業のプログラムの1つだ。

「知人が『TIAS』の短期プログラムに入ったのを見て調べたところ、奨学金制度があると知って、『これは絶対に行かなきゃ』と思いました。私の学年には世界各国18カ国から学生が来ていて、様々な文化、背景、交流から多くのことを学ぶことができました。

 障害のある学生、教授もいるので、彼らのニーズや考えを学ぶこともできました。柔軟かつ広い視野を持つ必要性もこのプログラムから学びました」と話す。

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