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東京五輪で変容する日本の空手界。
全日本空手道選手権で見た風景とは?
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byKoji Fuse
posted2018/12/13 17:00
ぞれぞれ個人戦の優勝者たち――右から香川幸允、喜友名諒、植草歩、清水希容。
改めて自らの弱さを実感し、反省。
その場で植草は「そんなことはない」と否定したが、すぐ考えを改めた。
「そう見えるということ自体、自分は弱い人だなと思い、ひとり反省しました」
ふたつの国際大会で優勝を逸したことで、植草には迷いが生じていた。
「自分がやってきたことが正解ではないのか。いや、そんなことはないはずだ」
では、どのようにしてリカバーしたのか。
「師範、空手・フィジカル・メンタルの各コーチ、栄養士さんにこれから自分はどのように2019年を目指していくのかということをハッキリ伝えました。そうしたら、気持ちがスッキリしたんですよ」
有言実行。まずは技術的な部分の修正に着手した。
「もともと自分はカウンターが得意。でも、自分から仕掛ける攻撃でポイントをとりたいという意識で練習していたら、カウンターが雑になっていた」
本当は目の前から消したいくらいと吐露する負け試合の映像も直視するようにした。
「そこから研究したり、勉強したりしないといけないので、見るしかなかった」
「勝負の根本を忘れていた」
案の定、世界選手権決勝の映像をチェックしたら、一瞬動きが止まっていたり、突きを打つ時に肩が丸くなっている自分がいた。
小さなミスをいくつか発見できたことで、植草は改めて覚醒することになった。
「勝つことばかりに目が行き過ぎて、勝負の根本を忘れていたような気がします。そういう部分を思い返すことができたのは本当によかった」
それからの毎日は修正できる自分が楽しくて仕方なかった。