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東京五輪で変容する日本の空手界。
全日本空手道選手権で見た風景とは?
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byKoji Fuse
posted2018/12/13 17:00
ぞれぞれ個人戦の優勝者たち――右から香川幸允、喜友名諒、植草歩、清水希容。
国際大会で続いた惜敗。
そうした中、あえて全日本選手権に出場した世界ランカーもいた。
現在女子+68kg級で世界ランキング1位の植草歩だ。
植草が全日本選手権が出場した理由はふたつ。ひとつは憧れの先輩である小林実希が打ち立てた全日本V3を打ち破るV4を達成したかったからだ。
過去全日本選手権の連覇は小林と植草が打ち立てた3連覇が最多記録だった。
師・香川政夫氏(現・WKF技術委員委員長)が植草の気持ちを代弁した。
「植草は小林の3連覇を抜きたかったんだよ」
もうひとつの理由は前述した世界選手権で準優勝に終わってしまったことがあげられる。
植草はディフェンディング・チャンピオンでV2をかけての出場だったが、決勝ではギリシャの選手に3-0で敗れてしまった。今年10月に開催されたプレミアリーグ東京でも決勝で敗れているので、立て続けに国際大会を落としたことになる。
「顔(表情)が良くない」と指摘され。
これまで試合に負けると、植草は1週間ほど自宅にこもることが常だった。
「負けた試合は見ないで、周囲との連絡もシャットアウト。そうしたら、あとはケロッとするだけでした」
しかし、オリンピックを1年半後に控えた現在、いつもと同じリカバー方法をとるわけにはいかなかった。
普段の植草は天真爛漫な性格で後輩からも慕われている存在だが、帰国後トレーニングを再開すると、周囲から「顔(表情)が良くない」と指摘された。
中でも、トレーナーからのさらに突っこんだ一言が胸に突き刺さった。
「お前、落ち込んでいるんだろ?」
「空手から離れたいのか?」