オリンピックへの道BACK NUMBER
宇野昌磨が、結果を求めはじめた。
全日本選手権は「壁」を超える舞台。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAasami Enomoto
posted2018/12/17 08:00
グランプリファイナルでの演技には満足していないと宇野昌磨は語った。2018年はまだ終わっていない。
周囲の期待は……やはり優勝。
周囲の期待に応えたいと強く思うようになったとき、結果を残したいという思いもおのずと以前より強くなった。
何よりも周囲が自分に期待しているのは結果、すなわち優勝することだと感じるからだ。
結果を出すためにも、実力を向上させつつ、練習で積み重ねたことを試合でしっかり体現しなければいけないという思いは高まっていった……。
ファイナルで感じた無念。
そんな変化も生まれた宇野は、9月のロンバルディア・トロフィー優勝を皮切りに、シーズンを過ごしてきた。
グランプリシリーズの1戦目となったのは10月のスケートカナダ。
ショートプログラムはミスがあったことで88.87点の2位にとどまったが、フリーでは渾身の演技を見せ、逆転で優勝を飾った。
続くNHK杯でもショート、フリーともにミスは出たものの、優勝。
「グランプリシリーズ2戦、ショート、フリーを2回ずつやって、自分を信じてできたのは、今回のフリーが初めてでした」
それぞれの試合で課題を見出しつつ、何かしらの手ごたえも得た。
自身初となるグランプリシリーズ連勝を果たし、進出した12月のグランプリファイナルは、今シーズンの宇野にとって、試金石となる大会でもあった。
ショートプログラムはネイサン・チェンに僅差の2位。逆転を期してフリーに臨む。
だが、冒頭の4回転サルコウは両足着氷となり、終盤のジャンプでもミスが出て、チェンに次ぐ2位にとどまった。
「満足しきれない演技でしたが、それ以上に申し訳ないという思いです。試合が終わって、ずっと、次の試合頑張りたいですと言い続けていて、自分にあきれたところもあります」
何よりも、自らプレッシャーをかけ、その中で結果を出す、というテーマをクリアできなかった無念が残った。